宇奈月小学校フライ教室日記 本村雅弘 フライの雑誌 2008

1993-1996にフライの雑誌に掲載された文章の再編集。
決して揚げ物のハウツウ本ではない(笑)

フライフィッシングという釣りの分野がある。
それは釣果を目指すというよりは、自然を観察して自然の中で釣りという遊びを行う手段だろう。本書の最後で本村さん(1962-)はかなりご自身の活動を小さく評価しているようだが、決してそんな事はない。川が身近にあるのに、川を知らない子供達を作ってしまった大人達。川で遊ばない(遊ぶ事を許されない)子供達が、眼をキラキラさせながら、フライロッドを振る姿が目に浮かぶ。そして釣れない時は、水泳のプールになってしまうのだ。それが自然なのだ。
出来るだけ身近な材料でフライ(毛鉤)を作り、竹で安価なフライ竿(ロッド)を子供達と作る、やがて大人のフライ教室にも繋がっていく。

黒部川ダムの廃砂事業は大きな問題になった。新聞報道でしかしらなかった現実が著者と子供達の目線で綴られている。川は一体だれのものなのか?
子供は「自然」そのものなだ。その自然を征服出来ると勘違いしているのは大人なのだろう。本村先生の様な先生が学校にいたらどんなに楽しく、人生という自然の中を歩けるだろうと思う。

<フライ教室>は眠らない、そして<河は眠らない>(開高健)なのだ。

あとがき(本村さんが最近の事を綴る)は泣ける。



宇奈月小学校フライ教室日記―先生、釣りに行きませんか。
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