世界のハンセン病との闘い 笹川陽平(1939- ) 明石書店 2010/04/27

2010年3月の野口アフリカ賞シンポジウム(ガーナ共和国 アクラ市)のレセプションの折に笹川氏から直接いただいた一冊。読むのが遅れてしまった。

2004年から2009年にかけて各種媒体への発表文書や会議等での講演内容をまとめたもの。

50歳を過ぎて自分の無知を恥ずかしく思おうわけです。
病気の事は一般の方よりは詳しいと思っていました、そして国際保健とか医療に関しても少しは知識があったと思ってはいたのですが、まったく無知でありました。
もちろんハンセン病の事は知っていました。
宮本常一の「忘れられた日本人」の中にも、宮崎作品のアニメ「もののけ姫」、映画では「ブラザーサンシスタームーン」やチェゲバラを描いた「モーターサイクルダイアリーズ」の中に患者さんが描かれていることを。
そして日本においても近年まで隔離政策がとられ、差別や偏見で苦しんでいた事を。
でもそんな事はほんのうわべの知識でしかなかった事を本書は教えてくれます。
病気は薬で治る、けれども回復後にも続く差別、偏見、スティグマ(社会的烙印)がいまだ世界中で当たり前のように存在していること。
そして多くの場合、経済弱者があるいは社会的弱者(カースト等の身分的弱者)にその辛苦が覆いかぶさっている。これは医療的には回復しても社会的には回復していなのだと笹川氏は訴えます。

重要な事(当たり前の事でもあるけど)は、国家の元首や大統領の積極的コミットメント、メディアの協力、現場に直接出かけていくという現場主義だと笹川氏は指摘します。
そして、ハンセン病は治る病気である、薬はすべて無料、差別してはいけない、という3つのメッセージを世界中に届ける事を使命だと断言します。
そしてこんな指摘がまさに的を得ていると私は感じました。
「西側諸国の中には、アフリカ悲観論に立ち、自分たちが代わって指導、監督していくのだという姿勢が見られますが、私は彼らと同じ目線で、ともに働き、汗を流して得られた成果を喜びたいと願ってきた。アフリカのハンセン病がなくなり、人々やスティグマの問題に苦しまない日がくるまで、何度でもこの地に足を運び、この歩みを緩めず邁進していきたいと思います。」p250


不可能を可能に 世界のハンセン病との闘い
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