森林の崩壊 白井裕子 新潮社新書 2009
図書館本

早稲田の理工出身で建築士である白井さんの著作。
上流にある森が下流の住宅を供給する。そして水源となり、ひとに憩いの場所を提供する。

十分な木材蓄積量がありながら外材で建てる日本の住宅。その原因は何なのか?
単なるコストの問題ではないことを氏は国内外での調査から指摘する。
国家予算のほんの一部が林業そのものに費やされているに過ぎない事、じつは林道、治山、砂防などの公共事業につぎ込まれている事。補助金行政の煩雑で無駄の多い仕組み。
そして現場でなく机上で作らせる施策や法律。
すべてがトップダウンで行われてきた林業あるいは環境行政の顛末がここにある。
いかに補助金で頼らないで、あるいは補助金をバネにして自立的な林業を成立させるかが林業存続のカギなのであろうと素人ながらに感じる。それには現場優先で物事が進まねばならない。後半部で描かれる日本建築の衰退も建築基準法というガンジガラメな法律により職能としての大工さんのやる気を失わせたのだろう。
個人的には林業が完全な循環型な産業とは思えないが(氏は植林して繰り返し木材として収穫出来ると書くが)森という存在が林業と環境という文脈において並列することには意義を唱えない。
内容的には非常に広範な情報が語られているが、一次情報元があいまいな箇所が多いのとデータの取り扱いを(アンケート等も)もっと図表にするなりすればより説得力を持たせる事が出来ただろうと思う。ご自身の得意分野であろう建築技術に関する項目はなかなか理解し難いというのが正直な感想である。

備忘録的メモ、
5機能3レベル3ゾーニング
山地災害防止機能、水源涵養機能、保健文化機能、生活環境保全機能、木材等生産機能
高い、中位、低い
水土保全林、森林と人との共生林、資源の循環利用林、それ以外に「保安林」


森林の崩壊―国土をめぐる負の連鎖 (新潮新書)
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