底ぬけビンボー暮らし 松下竜一 筑摩書房 1996

豊前火力発電所建設反対運動を契機に市民運動をはじめ、この運動の機関紙「草の根通信」が1973年に創刊された。本書はその1990年7月号から95年6月号に掲載された文章をおさめている。
「豆腐屋の四季」はTVドラマ化もされたほどの作品であり、また他の作品も版を重ねたものもある。それなのに貧乏なのである(笑)
「暗闇の思想を」などを読むと、どうしてここまで苦労して利他的に戦うのかという単純な疑問が浮かぶ。生活すべてを市民運動にささげて行く過程には多くの葛藤や苦労があったことが明らかであり、またそれを支えた家族、特に奥様の力なしには成しえなかっただろう。本書はそんな日々の暮らしの中のたわいもない事、されどとても大切な当たり前の事を読者に語りかけているようでもある。ご夫婦で毎日一時間以上かけて犬と一緒に出かけるお散歩。カモメにパンを与えるお二人の姿がキラキラと目の前に現れます。
常に右肩上がりの経済成長を続けていた70−80年代にすでに成長を終えた日本の将来を見据えて日本人の生き方を真剣に考えた一人の作家が居たことを教えてくれます。


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松下竜一 その仕事〈10〉底ぬけビンボー暮らし
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