父が子に語る近現代史 小島毅 トランスビュー社 2009

小島氏(1962−)は前著の「父が子に語る日本史」の好評を受けて本書を執筆したと書かれている。専門は中国思想史(東大准教授)だそうだ。
前著は読んでいないのだけれど、まず思った事は、網野善彦さんを受け継ぐ方なのかなと思った。日本という国の成り立ちや常民からの歴史に重きを置いているように感じる。
そして日本の歴史を学ぶ事で日本のこれからの在り方を考えてみてはどうかというのが本書の意図だと考える。そして人文学的な素養があったからこそ明治維新後の科学技術の発達発展を見たのに対し近年の技術のみを重視した大学システムをご自身の所属する東京大学とともに憂いている。
そして最近の自虐史観として批判される歴史観に対し、自慰史観であると指摘しています。
歴史が言葉で表わされる時に注意しなければならないのは、どんな切り口やどんな視点から書かれたかということである。簡単にいえば多くは支配者側あるいは統治側からみた記述が流布されるだろう。そしてそれに対して民衆側(常民)は種々の批判なり賛辞を送る。その様な文脈において小島氏が指摘するのは、先の戦争での戦争にいたった理由こそは普通の人々にもあるのではということである。

そして小島氏の子に対するメッセージは「歴史とは、世代を超えて受け継がれていく物語です。そこで活躍するのは政治家や芸術家であることが多いですけれど、僕たちひとりひとりが歴史の担い手です。そう、歴史は「常民」が作るものなのです。だからこそ、僕たちは日本という国の将来について、しっかりした責任を持つ必要があります。二度と「騙された」などと言わないために、ものごとをきちんと判断出来る力を、どうか養ってください」p176
前著も読みたくなった書籍である。



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