美しい森をつくる 速水勉 日本林業調査会 2007

副題:速水林業の技術・経営・思想

帯を内山節さんが書かれている。一冊の本になるのは素晴らしいことだ。読み取ってほしいのは、具体的な記述を介して語られていく勉さんの思想である。
またまえがき、発刊に寄せても内山さんが綴っている。そして勉さんの言葉として「美しい森がもっとも収益性の高い森である」と。
本書は勉さんが過去から現在にいたる間に各種媒体に発表された文章と書きおろしからなっている。まさに日本の近代林業の歴史を要約しているのであろう。
森林法の話し、環境問題への取り組み(原発反対運動、火力発電所の煤煙問題、中部国際空港の土取り問題等)、種苗方法等々が専門用語を交えながら淡々と語られる。

林業経営の中で、どんな小さい事でよいから、毎年一つは新しい事をやってみようというのが私の今までのやり方である。中略 とにかく単純になりがちな森林作業を、作業員とともども楽しくする一つの方法であると考えている。 P142

長男、亨氏との対話も蘊蓄のある親子問答になっていて、確実に勉氏の思想が亨氏にも受け継がれさらに磨きが掛っているように思える。
原発反対運動での住民投票勝利で親子での赤旗への掲載は何か微笑ましいというか、右左に関係なく郷土のために働く速水一家を象徴しているようでもある。
また、速水林業での勉強会のカラー写真があるが、その中に菅さん、岡田さんの顔が見える。当然政権交代の前である。2009年の事業仕分けWGに速水亨氏が含まれていたことの歴史の伏線が垣間見れたような気がする。


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