そのときは彼によろしく DVD 2007 原作 市川拓司

原作を読んでから、だいぶ経つ。
子供の時の体験は大人になっても記憶の中に埋もれる事はあっても、消え去る事はない。
市川さんの本を何冊か読んで思うのは、心の透明感というか清涼感である。
多くの映画はその原作を超えられていないと僕は思う。でもこの作品は違った。
自然、生老病死、他者との関係性。ゴミすらがかけがいのないモノとして命が吹き込まれていて使用者として人間達に語りかけている。
フランダースの犬、ネロとパトラッシュ。アントワープの大聖堂で天に召された命が再び地上に降り立つ、そんな映画なのだ。フランダースの犬を読んだり映画で見た方には理解していただけるだろう。
子供達の秘密基地、犬のトラッシュ。水草屋さんTrush、配達用のワーゲンのナンバーは53−53.
生老病死を循環する時間としてこれでもかと言うほどに映像に埋め込んでいる。沈む夕日、昇る朝日、そして繰り返される日々。
また、この作品を見るだろう。そして新たな感動を得るのだろうと思う。

原作を読んだ時の感想を記しておこう。2008年2月
そのときは彼によろしく 市川拓司 小学館 2004
既に映画化されDVD化もされているとの事。DVDを見た知人が泣けた(感動した)との事で原作を読む。
1962年生まれの市川さんの感性は年齢も近い事から非常に身近に感じられる。大きなゴミ捨て場、小学校や中学校での帰宅時のみちくさ、少ないながらも存在する小川や池、そして其処に棲む植物や動物達。
14歳の多感な少年少女の交友、30歳での再会そして。。。
全ての人が通り過ぎる時代、初恋、恋愛、失恋、別離、今は瞬時に過去となり時に忘れ去られる。しかし、忘れようとしても忘れる事のない時代は確実に存在す る。二人の男の子と一人の女の子を中心にした世界がキラキラとそして切なく今を過去にしていった。しかし15年後の未来は確実にその過去から創り出され る。友情や恋愛だけでなく、親子愛、特に父子愛の描写も物語を大きく彩っている。こんな描写にオヤジは弱いのである。

阿部夏丸さん、川上健一さん、梨木香歩さん、湯本 香樹実さんと共通する温かみがあるけど、市川さん独特の世界も良いですね。
通勤電車では絶対読まない事をお薦めする。
布団の中で号泣である。

ちなみに映画のロケ地の一つは山梨県甲斐市(元の双葉?敷島?)
http://loca.ash.jp/info/2007/m2007_sonokare.htm

廃バスとため池が良い。


そのときは彼によろしく スタンダード・エディション [DVD]そのときは彼によろしく スタンダード・エディション [DVD]
出演:長澤まさみ;山田孝之;塚本高史
販売元:東宝
発売日:2007-12-21
おすすめ度:3.5
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