落下傘学長奮闘記 黒木登志夫 中公新書ラクレ 2009
大学人および独法化された組織の方あるいは今後独法化が想定されている組織人の方は必読だと思います。
癌の基礎研究者である黒木先生がまさに命をかけた地方大学(岐阜大学)の独法化奮闘記である。そして大学法人化の光と影をデータを多用して説明しています。
運営交付金の効率化係数、病院運営交付金の経営改善係数は誤った政策であると指摘する。
移動官職(文科省の人事で動く事務職員)と地元雇用事務官、教員および学生の巨大組織としての大学のあるべき姿とは何か?
社会的共通資本(宇沢弘文)には自然環境、社会的インフラ、制度資本の3つのカテゴリーに分けられ、制度資本のなかでも社会にとって最も重要なのは教育と医療であり「市場的基準を無批判に適用して競争的原理を導入、することを宇沢は戒めていると。
独法化後の旧帝大優先な予算処置の「選択と集中」の対立語は「バラマキ」ではなく、多様性や寛容性、持続性であり、選択と集中だけの政策は心の豊かさを失うと指摘する。抽象的な表現の様に見えるが実はもっとも大学という文脈を的確に表していると感じる。
温和な黒木先生(大学院時代に実習でお世話になった)が学長として何度かキレたと独白している。
教育という国家の根幹を作る制度に対するまさに献身的な生き様がすがすがしい一面、痛々しくも見えてしまう。ただ、こんな学長のいる大学で学べる学生は幸せである。
東大独り勝ちと言われる現在、あえてご自身が過ごされた東大医科学研究所を含めて俯瞰的に考察される態度はまさに偉大な基礎医学研究者でもあった事を証明している。
そして、学長退職の後、ゆっくりされると思っていたら、学振でまた重責を担われているようだ。
結局何事もヒトなのである、銭金でないところに、本質的な人間の「品格」が出るのだろう。

落下傘学長奮闘記―大学法人化の現場から (中公新書ラクレ)
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大学人および独法化された組織の方あるいは今後独法化が想定されている組織人の方は必読だと思います。
癌の基礎研究者である黒木先生がまさに命をかけた地方大学(岐阜大学)の独法化奮闘記である。そして大学法人化の光と影をデータを多用して説明しています。
運営交付金の効率化係数、病院運営交付金の経営改善係数は誤った政策であると指摘する。
移動官職(文科省の人事で動く事務職員)と地元雇用事務官、教員および学生の巨大組織としての大学のあるべき姿とは何か?
社会的共通資本(宇沢弘文)には自然環境、社会的インフラ、制度資本の3つのカテゴリーに分けられ、制度資本のなかでも社会にとって最も重要なのは教育と医療であり「市場的基準を無批判に適用して競争的原理を導入、することを宇沢は戒めていると。
独法化後の旧帝大優先な予算処置の「選択と集中」の対立語は「バラマキ」ではなく、多様性や寛容性、持続性であり、選択と集中だけの政策は心の豊かさを失うと指摘する。抽象的な表現の様に見えるが実はもっとも大学という文脈を的確に表していると感じる。
温和な黒木先生(大学院時代に実習でお世話になった)が学長として何度かキレたと独白している。
教育という国家の根幹を作る制度に対するまさに献身的な生き様がすがすがしい一面、痛々しくも見えてしまう。ただ、こんな学長のいる大学で学べる学生は幸せである。
東大独り勝ちと言われる現在、あえてご自身が過ごされた東大医科学研究所を含めて俯瞰的に考察される態度はまさに偉大な基礎医学研究者でもあった事を証明している。
そして、学長退職の後、ゆっくりされると思っていたら、学振でまた重責を担われているようだ。
結局何事もヒトなのである、銭金でないところに、本質的な人間の「品格」が出るのだろう。

落下傘学長奮闘記―大学法人化の現場から (中公新書ラクレ)
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