初出は1996「悪妻に訊け、帰ってきたソクラテス」(新潮社)94年から95年、新潮45への連載。
ソクラテスの妻、クサンチッペを対話相手にして時節の話題や中心に「実名」で斬りまくっていく感じだろうか。「ソフィーの世界」「柄谷行人」「西部邁」「立花隆」等など。ちなみにソクラテス(池田某)は養老孟司には一目置いている。それはこんな文章で現れる。立花隆の「臨死体験」をクサンチッペに対して「はやりの本なんか買うもんじゃないって」そして続ける「いつも言っているじゃないか。人間の考えそうなことなんざ、大体もうとうに考えられちまっているのだよ。人が死ぬのは今に始まったことじゃないからね。読むんなら古典を読みなさい。僕は是非プラトンを勧めるね。そうじゃなければ養老孟司だ」
クサンチッペ「ああ、唯脳論」ソクラテス「いや、実はあれは無脳論でもあるのだ」
前作「帰ってきたソクラテス」では実名でなく職名等で話が進んだか今回の作品では先に書いたように実名である。そしてあとがきで、その実名の方からの反論その他を頂戴したことがないと記す。そして編集者が「スッパリ切るなら血は出ないのですよ」と。
時代を経てもその新鮮さが衰えない池田晶子(2007没)は必ずや古典になっていくのだろう。それは、はやりでなく、本質だけを見つめ続けているから。


ソクラテスよ、哲学は悪妻に訊け (新潮文庫)
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