単行本は1999年

南木佳士さんは多くの肺がん患者さん等の死を見てご自身がパニック症候群や鬱になってしまった。その病の長い道のりが終わりかけた頃の作品なのだろうか。
タイトルでもある「家族」は、虚構の中の自叙伝もあるように感じる。
自身の生い立ちは既に多くの著作の中で書かれているが、本作品ではまさに家族を証言者として登場させてある種自虐的にも見える作品となっている。
逆にその自虐性が南木佳士という医師である前に男である弱さと優しさを存分に表出させている。単なる想像ではあるが、病み上がりのまだトゲトゲとして心象表現なのかとも思う。
信州という場所で佐久という自然と人々に生かされ生き抜く男と家族、そして多くの患者さん達。
ありふれた日常と風景がなぜか心を揺さぶるのである。

家族 (文春文庫)
家族 (文春文庫)