図書館本
副題:誰が損をしているか?

初めに書いておくと、日本学士院賞を取った方と言うバイアスがある。
ノーベル賞と同じく長生きしないと取れないとも言われるこの賞を1961年生まれの著者が2008年に受賞。

さて、本書は日本経済新聞やご自身のブログ等に2005年から2007年の間に起こった経済関連の動きをコメントしたもの。さらに追記を加えて日本経済の問題点等を指摘している。
ただ、どうしても貨幣と言うものを評価基準にしているだけで、其処に哲学や思想、あるいは人間の豊かさとか幸福と言った文脈が見えてこないと思うのは小市民的発想なのだろうか。
盛んに制度の問題等を指摘されるが、なぜか身体性の欠如した脳化した社会だけが其処に見えてきてしまいます。
多くの賞を受賞したという「日本の不平等」を読んでさらに考えて行きたいと思う。

幾つか備忘録的にメモしておく。
「ねずみ講」的な公的年金制度。既得権益者(高齢者、団塊の世代)
格差という言葉(定義)の多義性と所得格差の日米間での認識差異
若年層の格差問題解決は教育改革と既存社員の賃金カット
既得権重視の政策重視は一時的に既得権者に幸福感を与えるが、結局は全員が被害を受ける。
悪玉論は心地よいが結局は一時的であり解決策にはなりえない。
理性から感情へは自らの自由を毀損していき、大衆迎合主義に支配される社会になる。
既得権を打破しないと若者の潜在力を発揮することは出来ない(赤木智弘氏の「丸山眞男」をひっぱたきたい、を例に)
奇妙な再分配を避けるには過去や他人との比較から逃れて、将来に目を向け、絶対水準でものを考えることが必要。
格差に関する実証研究の蓄積が必要である。


格差と希望―誰が損をしているか?
格差と希望―誰が損をしているか?