2002年から2005年の3年間をガーナ初の民間出身大使として暮らした浅井弁護士のエッセイ。

読み始める前は、おそらくお気楽ガーナ旅行記だろうな程度の認識であった。しかし、まったく違った。お恥ずかしい告白だが、読み終えた時に熱くこみ上げるものがあった。
多くの守秘義務や社交辞令的な外交という公務をこなしながら、常に目線が民衆側に向いている。

さらに第4章では「しっかりしなさい外務省」と題して、かなり厳しい外務省批判を行っている(もちろん、職員の奮闘ぶりを紹介していて、システムや枠組みへの不満等が多いのではあるが)。最も的確だと思ったのは、外務省の将来外交(10年、20年先の)が見えないとの指摘だろう。もちろん、某同盟国も将来計画があるとは思えないのであるが。。。

いずれにせよ、対アフリカ諸国外交の重要性を的確に浅井さんは指摘している。
また、自分自身もいつも不思議だったが、大使がなぜドイツ車を公用車として使うのか?
この点もチクリと刺していて面白い。さらに大使公邸に地元の美味しいビールを置かないこと(安い、たぶんスター、クラブ、ゴルダーだろうか)を嘆いたりしています。

多くの大使が通常訪れない僻地にも足を運び、青年海外協力隊の活動場所を訪問したり、治安がそれほど良くないマーケットでケンテ生地(ガーナの伝統的生地)を買って洋服を仕立ててもらったり、実にオープンな大使である。
ガーナ人の文化、歴史そして価値観を認めてこれからのさらなる外交および友好関係を築きたいという浅井さんの熱い思いが伝わる一冊であった。そしてガーナ人やガーナの理解が進む一冊でもある。

追加
p154のイラク戦争に対する外務大臣への意見具申書は痛烈にアメリカ批判をしていて、まったく同意。
さらにバクダッドでの日本人外交官の殺害に際も具申書を同様なアメリカ批判を行っている。おそらく民間大臣だからこそ出来たのである。確か他の大使は同様な具申書を書き辞職されたと記憶しているが。

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