図書館本

読み始めたら止まらない。凄い生き様、そして世間の闇と光。
1943年長崎県平戸生まれ、定時制高校、岡山大学、在学中に司法試験合格。そして検事に。特捜のエースと呼ばれ、その後弁護士となり闇の世界との交流が始まる。現在は石原産業事件で詐欺容疑で最高裁上告棄却、2審の東京高裁判決が確定し、田中の弁護士資格は剥奪され収監される(懲役3年、2008年2月)。貧しい漁師の家の生まれ、正義の味方として数々の事件に関わるが、そこには種々の圧力がある。まさに国体維持としての上部からの圧力、人間関係を利用した圧力。また犯罪者であっても弱きモノへのいたわりも田中氏は持っていたのだろう。そして弁護士に転じ、ちょうどバブル時代の波にも乗り大きなお金も得た。
検事の仕事を、こう書く。犯罪者にペナルティーを課し、ドブを多少なりとも掃除するのが検事の仕事。検事や弁護士のバッジを光らせて傲慢な顔で闊歩するほどの仕事ではない、と。
多くの事件(政治家の贈収賄等)が表に出る事なく終息していく中で、ヤクザや同和がらみの事件で弁護士として対応していく。被疑者に弱いモノとしての愛情を注いでかつ人間関係を大切にする田中氏の生き方が見える。拘置所で読んだ中村天風「真理のひびき」の「怒らず、恐れず、悲しまず」を座右の銘としているという。
多くの政治家や有名人、任侠世界の人々の実名が登場する。ここまで書いて大丈夫だろうかとこちらがドキドキする。もちろん、まだまだ書けない名前や事件もあるのだろうが、佐藤優さんや魚住昭さんの著作とも通ずるまさに国策捜査と言うものがどのようなものか良く分かる。

反転―闇社会の守護神と呼ばれて