「西の魔女が死んだ」を読み梨木さんの著作に興味を覚えた。
読み終えて最初の感想は凄いの一言である。
長編小説と言う分類が正しいのか?
誤解を恐れずに言えば、生命哲学がまずあり、生物学、心理学、民俗学、生態人類学、進化学そして地球環境学等々。
「僕」の存在が名前を得て行く過程などはまさに哲学的存在論であり、ヌカ床と沼地は「心脳問題」の本質だろう。ヌカ床から生まれ出る存在は記憶であり、その実態は学習や経験からの記憶ではなく生まれる前から存在する記憶でもあるのだろう。
クライマックスに登場する島、そして森、海はまさに「僕」でもあり「地球」でもあり、「宇宙」でもよい。細胞壁あるいは生体膜に区切られている存在が交わり時に新たな出発(進化)をする。
それは単に人間と言う種だけの問題で無い事を複雑系である森(環境)を通して、全ての生物と非生物の折り合いという混沌の中にいる「僕」を表現している。

同じ歳の作者のあまりにも凄い才能と洞察そして思索に嫉妬を超えた感情を覚えた。

沼地のある森を抜けて