図書館本

多くの人が食べる牛肉、豚肉、鶏肉。
しかし、その肉の元の動物の姿は知っていても、肉になる過程を知る人は少ない。人間は動物を殺して食べている。その部分をブラックボックスのようにして忌み嫌っている人もいる。そして、そこに差別の問題もある。
本書はあえて屠場とタイトルし(現在は食肉センター等の呼称、屠畜ではなく、と畜と表記するようだ)そこに働く人々を描き出している。
また、日本人の牛豚の肉を食べるようになった歴史(主に外国との交易による)も書かれていて興味深い。

著者も網野善彦の著作を引用して「かっては畏怖すべき事態ととらえられていた、「穢れ」に対する社会の対処が、文明化の進展とともに大きく変わりつつあり、「穢れ」を汚穢として忌避する空気がしだいに強くなってきた。葬送や、刑吏として住宅破却に携わった非人や犬神人、囚守の役職にあり刑吏として斬首を行なった放免、斃牛馬の皮を扱う皮原細工丸などの人びとは、なお神人、寄人の呼称をもち、天皇、神仏に結びついてキヨメに携わる職能民として畏れられる存在であったが、13世紀末になると、一遍などの新しい宗教をはげしく罵倒した「天狗草紙」に、はじめて河原細工丸を「穢多」という字でで表現した事例があらわれる。このように穢れのキヨメに関する職能民それ自体を賤視する空気が、貴族、寺社の一部にしだいに強くあらわれるようになってきた」

ドキュメント 屠場