図書館本

国策捜査のターゲットになった外務省の佐藤さんのまさに獄中日記。
すでに彼の著作で獄中の様子は述べられているのではあるが、より詳細に心象風景も含めて記述されていると思う。
佐藤さんにとっての約500日の勾留は実は落ち着いて勉強出来る時間であったことがよく分かる。付録として読んだ本のリストが掲載されているが、一般国民がほぼ読まないような本ばかりである。国益のための外交であった自負、誰よりも対ロシア外交に対して誠心誠意取り組んだという自信が感じられる。500ページにも及ぶが、日記としてオープンにされていない日も多い。おちゃめなところは、「欲しいリゾート9月号」なんかも見ているところでしょうか。これは数千冊に及ぶ佐藤さんの蔵書を出所後にゆっくりと読める場所を確保するためなのだが。
宗教書、歴史書などを読み込んでいるわけだが、網野善彦やコンラートローレンツ(動物行動学)もしっかり読んでいるのには驚かされる。
控訴審が興味あるところである。

備忘録として
佐藤さんが心がけている事として
1)よきクリスチャンでありたい。
2)よき官僚でありたい。
3)よき知識人でありたい。
中略、この三つの行動原理に対応する価値観は
1)神に対して誠実でありたい。
2)日本国家(国益)に対して誠実でありたい。
3)知に対して誠実でありたい。 p205

小泉総理の軸足は、基本的に傾斜配分、強い者の強化、そして持続的経済成長であると整理してよいと思う。これに対して鈴木さんの軸足は公平分配、草の根からの基礎体力強化、さらに成長の限界を念頭に置いたシステム転換を指向していると整理できる。鈴木さんがODAに熱心なのも、世界規模での公平分配を考えているからである。僕は政治哲学の基本的な枠組みをみた場合、小泉さんや竹中さんが考えているビジョンより小渕さんや鈴木さんのビジョンの方が二十一世紀の日本にとってふさわしいと考えている。 p322
ひねくれたものの見方になる外交官(特に通訳官)が多いのは残念なことだ。ヘーゲルは「従僕の目に英雄なし」という言葉でこのことを説明している。中略 歴史や政治を見る時には、下人(従僕)根性に陥ってしまってはならない。常に高い理想を維持しなければつまらない。検察官は下人根性で人を見ることが仕事なので、彼らに歴史や政治は分からないのである。 p410獄中記