ブラックバス問題

朝日の記事

釣り堀に無許可ブラックバス 環境省は「審査中」と容認


 05年6月施行の外来生物法で飼育が許可制となったブラックバスを扱う釣り堀や養殖場のほとんどが、無許可で営業していることが分かった。東北、関西地方などの約60カ所は許可申請し、施設の不備を指摘されて改善を求められたものの、環境省は「審査中」を理由に無許可営業を容認している。環境法の専門家は「違法な状態を放置し、外来生物法を形骸(けいがい)化させている」と指摘している。

 ブラックバスは北米原産。法施行前から扱ってきた業者に限り、施行後半年以内に同省に申請し、審査を通れば許可される。

 同省によると、約60カ所には休耕田に水を張ったものから、ため池を利用したものもあった。バスは意図的に放流されて全国的に広がったと見られるため、何者かが侵入して持ち出されないためのフェンスや、洪水の際に逃げ出さないかどうかを重点的に審査。すべてで不備が指摘された。

 ところが、改善して許可された2カ所以外も営業を継続。同省は「改善中」や「審査待ち」などとして黙認している。

 無許可で営業する東北地方の釣り堀では、雪解けとともに数百匹のバスが放された。夜間は無人だが周囲にさくやフェンスはない。排水口には幼いバスならすり抜けられる幅約1センチの格子状の網があるだけだ。外来種のウチダザリガニも一緒に飼っている。

 管理人によると、05年秋に許可申請したが、環境省職員が調査に来たのは、朝日新聞がこの問題を同省に取材した直後の5月30日。「今頃になって突然来て、排水口の網を細かくしろとか、周囲にフェンスを張れとか言ってきた。金がかかるのでできない」と語る。

 現地を見たことのある中井克樹・滋賀県立琵琶湖博物館主任学芸員(魚類生態学)は「ウチダザリガニが掘った穴からもバスが逃げる恐れがある。外部からの侵入も自由で持ち出される危険もある」と警告する。

 三村起一・同省外来生物対策室長は「調査する職員が足りない。適正な状態になるのに何年かかるか分からない」と話す。これ以外にも申請せずに営業する施設があると見るが、何カ所あるかは分からないという。

 磯崎博司・明治学院大学法学部教授(環境法)の話 環境省は違法行為を移行期間のような意味合いを持たせて放置すべきでない。法を守らせる側が自ら進んで法の裏をかく口実を与えている。