ビトウイン 川上健一 2005年  集英社

今日ほど、通勤電車の通勤時間が長くあって欲しいと言う日はなかった。座れる通勤電車は僕の書斎でもあるのだが、何時もは早く東京駅に着かないかと思うのである。今日はアット言う間の移動でした。
読み始めて、いきなり、南アルプスと八ヶ岳に挟まれた。。。。。山梨?長野?文字を追うにつれて、川上さんは山梨、それも僕が良く知った、そして釣りをする場所に住んでいるんだと気がつきます。釣りをしているなどと全く知りませんでした。沢山の知っている地名や風習が出てきて、望郷の念を抱かせます。
「雨鱒の川」から「翼をいつまでも」、までの10年間を山梨の田舎で生活されていて、その時のエッセイなんです。体調を悪くされ、医者の薦めもあり、山梨に来たそうです。収入はテニスのコーチ、晩飯はたまにイワナの塩焼き用に釣ってくる岩魚がご馳走、奥様も手をかけて身の回りのものでお料理やジャムを作ったりします。お嬢さんは天真爛漫に自然を駆け巡り、村の生活を楽しんでいます。お金が無い事が、家族の笑いや喜びを増幅しています。もちろん田舎暮らしの大変さはあるはずですが、それを超越してしまうようなご家族です。
川上さんは凄くずるいです。20年ほど前に野田知佑さんと天塩川やスイスの川を一緒にカヌーで下っているそうです。さらにスポーツ万能、天才的な純愛小説家、さらに幸福な家族。おんぼろ借家に住みながらも、殆ど手作り。多くの中年がヤリタイ事をことごとくやってしまいました。そうお金で買えないモノばかりを。

この本もやはり通勤電車では読んではいけません。眼が真っ赤になること100%です。
長坂駅の駅員さん最高ですよ!「翼をいつまでも」を書き上げて、プリントアウトして奥様にプレゼントした後の情景は反則ですよ、川上さん。今度是非一緒に釣りをさせてください。
ビトウィン