
環境問題こそ最大の政治問題。人と自然の間に巨大な壁ができてしまった。(帯より)
身体を自然の一部だと認める事。これが難しいと養老先生は言う。
「ああすれば、こうなる」と思考することが脳化社会の基本だと言う。
虫の種類の減少や総数の減少を肌で感じている養老先生の、人類がこれから直面する
危機を日本人は真剣に考えなければいけないと思う。もちろん世界も。
DDTはノーベル賞を取ったが、その後の使用禁止を見ても明らかなように
昆虫を殺したが、人間にも害があることが分かった。
日本住血吸虫の撲滅のため宮入貝を絶滅させるために農業用水路はすべてコンクリート
で固めた。(おいらはその周辺の住民だから良く知っている)そしてメダカは居なくなった。
これらは、ああすれば、こうなる式の結果である。
日本の里山の手入れや、魚付き林の手入れは日本の素晴らしい自然の付き合い方だった。
欧米の単なる森林伐採等とは異なり、自然から恵みを得ながら生活を行ってきた。
コントロールと言うマニュアル化されたものは手入れではない、すなわち自然との関わりを
マニュアル化などできるはずもないのであるから。
努力、根性、辛抱と言う日本人の国民性は自然との関わりの中で手入れ
をして得たものである。
遺伝子組換えや異種移植に関しても養老先生の指摘は及んでいる。是非研究者も読まれる事を期待する。
人間の細胞の一つすら作り出すことが出来ない我々は何処から来たのか?
それは自然であることは明らかではないだろうか。
内容(「BOOK」データベースより)
環境問題のむずかしさは、まず何が問題なのか、きちんと説明するのが
むずかしいことにある。しかし、その重大性は、戦争、経済などとも
比較にならない。百年後まで人類がまともに生き延びられるかどうかは、
この問題への取り組みにかかっているとさえいえる。だからこそ、
環境問題は最大の政治問題なのである。そもそも「人間社会」対
「自然環境」という図式が、問題を見えにくくしてきたし、人間が
なんとか自然をコントロールしようとして失敗をくりかえしてきたのが、
環境問題の歴史だともいえる。本書は、環境省「二一世紀『環の国』
づくり会議」の委員を務め、大の虫好きでもある著者による初めての
本格的な環境論であり、自然という複雑なシステムとの上手な付き合い
方を縦横に論じていく。