副題:遷都・リニア・道州制 A New Plan for Redesigning Japan
天野氏(1928生)京大工学部土木卒、国鉄、京大工学部教授、各種審議委員等をされたご経歴が記載されている。本書は退職時に出版されたのだろうか。リニアの火付け役とも言われているようだ。また1994年には国土再編計画というこれまでの論文あるいは雑誌掲載分をまとめた書を出版している。これも同じくリニア本である。
広範なデータを用いて、東京一極集中の問題を提起し、その問題解決のためにはリニア新幹線構想が必要だという論理展開である。まさに副題にもなっている遷都(本書では拡都構想)、リニア・ネット21構想、地方分権と道州制まで論じている。
非常にアトラクティブに話が進むのだけれど、見落とされている点が多々あるのが残念であり、また今となっては(2013年現在)まったく著者の予測と異なっている点も多々ある。
一番の問題点は右肩上がりの経済予測、人口動態の無考慮、自然環境保護に対する無知、高速化のみの幸福論等々だろう。
技術だけが人間の幸福を導くというある種の工学部的思想の到達点がここにあると思う。
そして、LCC(格安航空)の出現や高速バス輸送網などはまったく予測していない。
備忘録的メモ
東京での大深度地下利用の危険性を指摘(地下鉄等での停電、水圧、避難対策等)、リニアはこの大深度で走るらしいが。
東京一極集中による社会資本投資に非効率化(これは正しいかな)
第二関東大震災の可能性(確かにこれも指摘としては誰もが思う)
マッハ8のオリエント・エキスプレス(東京―NY3時間)が21世紀前期に出来る(出来ました?)
首都特別区 ネオ甲府(韮崎市東北方の茅が岳南斜面が良いそうだ、金丸さんが喜んだ?)
リニア建設費3兆円(金利7%)1日10万人のれば10数年で全額返済(本当ですか?)
開発利益還元での建設費(土地の売却益で新たな開発地区建設費まで賄う)
拡都構想は一石八鳥(とらぬ狸の、、、)
仙台から神戸までリニア路線を敷設する費用は8.8兆円
リニアは金持ち日本からの贈り物(バブルは弾け、右肩上がりがこれからも続く?)
21世紀を拓く新国土改造論―遷都・リニア・道州制 [単行本]