沖縄の米軍基地 「県外移設」を考える 高橋哲哉 集英社新書 2015
是非、反戦平和活動に興味のある方、戦争法案に反対されている方、集団的自衛権に賛成されている方に読んで頂きたい一冊です。
結論から書いておきます。
「本土の人間がなしうる唯一の行動とは、沖縄の基地を引き取る(受ける)ことである」
それがなぜか? がこの本の本論でしょう。
犠牲のシステム論の高橋先生である。
本書ではその事には触れられていないのでご興味ある方は「犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書) 新書 – 2012」を手に取ってみてください。
まず犠牲のシステムとは
「犠牲のシステムでは、或る者(たち)の利益 が、他のもの(たち)の生活(生命、健康、日常、財産、尊厳、希望等々)を犠牲にして生み出され、維持される。犠牲にする者の利益は、犠牲にされるものの 犠牲なしには生み出されないし、維持されない。この犠牲は、通常、隠されているか、共同体(国家、国民、社会、企業等々)にとっての「尊い犠牲」として美化され、正当化されている」
翁長知事がスイス・ジュネーブの国連人権理事会で演説した通り(2015年9月)、基地問題は人権問題でもある。そしてそこに差別が存在するのだろう。
さて本書である。
まずキーワードを羅列してみる
0.6%の土地に74%の米軍基地(詳しくは73.92%)
沖縄の人口は全国の1%
在沖縄米軍兵力(海軍、陸軍、海兵隊)25843人 6割海兵隊 2011年3月末現在
沖縄の基地面積 231.7㎢ 沖縄島(本島)の訳18%(その75%は海兵隊施設)
サンフランシスコ講和条約発効当時の基地 本土と沖縄での面積比率 9対1 復帰時 1対1、 その後現在 1対3
講和条約発効と同時に海兵隊はいったん全て撤収 朝鮮戦争勃発で再度本土に分散駐留
1947年9月20日 昭和天皇の米国へのメッセージ(米軍の長期沖縄軍事占領希望)
日本政府による米軍撤退「引き留め」1995年の米兵少女暴行事件後
2012年海兵隊の米国提起の岩国移転、日本政府により拒絶(玄葉外相)
日米安保条約 世論調査 2014年1月82.9%が役に立っている(役だっていない11.5%)
日米安保条約第10条 日米両国のどちらかが「この条約を終了させる意思を通告」しさえすれば、その1年後に条約は「終了する」
米軍専用施設がない道府県は36 自衛隊との共同利用施設がない府県は33 一時利用可能施設すらない府県 18
備忘録的メモ
日米安保体制、自衛隊、憲法9条の3者セットで成り立ってきた戦後日本の「平和」は、沖縄を犠牲とすることで初めて可能だったのではないか。
沖縄の気持ち「自らの苦しみをよその場所に移したくない」
沖縄は日本復帰後も依然として日本の植民地。日本人は植民者であり、沖縄人は被植民者である。沖縄に米軍基地を押し付けてきたのは日本人。 野村浩也氏(広島修道大学)
良心的日本人の中に潜む無意識の植民地主義。ポジショナリティ(政治的権力位置)をしめす権力的沈黙(都合の悪い時には沈黙してしまう態度、連帯しよう(日本人)、だったら基地を日本に持って帰るのが一番の連帯!(沖縄人)--------- (権力的沈黙)(日本人)
沖縄にある米軍基地は、本来、「本土」の責任において引き受けるべきものなのに、「本土」はその責任を果たしていない。県外移設要求は、その責任を果たす事を求めているのである。日米安保体制を成り立たせている「本土」にではなく、小さな沖縄にその意に反して多くの基地がおかれているところに、在日米軍基地をめぐる根本的矛盾がある。 県外移設とは、この矛盾を解消し、在沖縄米軍基地を、安保体制下において本来あるべき場所に戻すという意味を持っているのである。
私もその一人である現在の日本国民は、敗戦直後の昭和天皇の発想から何ほども抜け出られていないということになるだろう。
反戦平和運動=日米安保条約破棄=在日米軍基地撤去 この構図が県外移設をタブー化
護憲派(リベラル左派)に位置する人々はいまやこの点で根本的な自己点検を求められている。
沖縄から日本に基地を持ち帰る運動を同じ日本人に向けて展開しなければならない。野村氏
沖縄の反基地運動は反戦平和運動のためにあるわけではない。2度と沖縄戦のような悲惨な戦場にされないために、生き延びるために、基地のない沖縄でただ静かで平穏な生活を送りたいために、自分たちを脅かすものに対してやむをえず抗議の声をあげているのである。
沖縄を「悪魔の島」(ベトナム戦争時沖縄から北爆に出撃)にした張本人は基地を押し付けた日本人
全国で「平等負担」に努めるならば、一都道府県あたりの負担増はごくわずかである。
本土の沖縄化に反対するという反基地運動の発想とスローガンに「日本の「中華思想」的感覚」が潜んではいないか? 大江氏 本土の本土による本土のためのスローガン 野村氏
沖縄の日本国家からの離脱(独立ではない)新城氏
日本人・沖縄人、二項対立の脱構築 デリタの「脱構築」
韓国併合の論理を反復する「中国脅威論」 捨石としての沖縄 皇土防衛
目次
第1章 在沖米軍基地の「県外移設」とは何か(憲法九条にノーベル平和賞を?
「本土の人間がなしうる唯一の行動」とは ほか)
第2章 米軍基地沖縄集中の歴史と構造(基地はなぜ沖縄に
日本政府が求めた海兵隊の「沖縄駐留維持」 ほか)
第3章 県外移設を拒む反戦平和運動(県外移設を遠ざけてきた「反戦平和」
「安保廃棄、全基地撤去」はいつまでに ほか)
第4章 「県外移設」批判論への応答(知念ウシ氏と石田雄氏との往復書簡
戦後民主主義の政治学と県外移設 ほか)
終章 差別的政策を終わらせるために(県外移設要求に応えるのが「本土」の責任
韓国併合の論理を反復する「中国脅威論」 ほか)
是非、反戦平和活動に興味のある方、戦争法案に反対されている方、集団的自衛権に賛成されている方に読んで頂きたい一冊です。
結論から書いておきます。
「本土の人間がなしうる唯一の行動とは、沖縄の基地を引き取る(受ける)ことである」
それがなぜか? がこの本の本論でしょう。
犠牲のシステム論の高橋先生である。
本書ではその事には触れられていないのでご興味ある方は「犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書) 新書 – 2012」を手に取ってみてください。
まず犠牲のシステムとは
「犠牲のシステムでは、或る者(たち)の利益 が、他のもの(たち)の生活(生命、健康、日常、財産、尊厳、希望等々)を犠牲にして生み出され、維持される。犠牲にする者の利益は、犠牲にされるものの 犠牲なしには生み出されないし、維持されない。この犠牲は、通常、隠されているか、共同体(国家、国民、社会、企業等々)にとっての「尊い犠牲」として美化され、正当化されている」
翁長知事がスイス・ジュネーブの国連人権理事会で演説した通り(2015年9月)、基地問題は人権問題でもある。そしてそこに差別が存在するのだろう。
さて本書である。
まずキーワードを羅列してみる
0.6%の土地に74%の米軍基地(詳しくは73.92%)
沖縄の人口は全国の1%
在沖縄米軍兵力(海軍、陸軍、海兵隊)25843人 6割海兵隊 2011年3月末現在
沖縄の基地面積 231.7㎢ 沖縄島(本島)の訳18%(その75%は海兵隊施設)
サンフランシスコ講和条約発効当時の基地 本土と沖縄での面積比率 9対1 復帰時 1対1、 その後現在 1対3
講和条約発効と同時に海兵隊はいったん全て撤収 朝鮮戦争勃発で再度本土に分散駐留
1947年9月20日 昭和天皇の米国へのメッセージ(米軍の長期沖縄軍事占領希望)
日本政府による米軍撤退「引き留め」1995年の米兵少女暴行事件後
2012年海兵隊の米国提起の岩国移転、日本政府により拒絶(玄葉外相)
日米安保条約 世論調査 2014年1月82.9%が役に立っている(役だっていない11.5%)
日米安保条約第10条 日米両国のどちらかが「この条約を終了させる意思を通告」しさえすれば、その1年後に条約は「終了する」
米軍専用施設がない道府県は36 自衛隊との共同利用施設がない府県は33 一時利用可能施設すらない府県 18
備忘録的メモ
日米安保体制、自衛隊、憲法9条の3者セットで成り立ってきた戦後日本の「平和」は、沖縄を犠牲とすることで初めて可能だったのではないか。
沖縄の気持ち「自らの苦しみをよその場所に移したくない」
沖縄は日本復帰後も依然として日本の植民地。日本人は植民者であり、沖縄人は被植民者である。沖縄に米軍基地を押し付けてきたのは日本人。 野村浩也氏(広島修道大学)
良心的日本人の中に潜む無意識の植民地主義。ポジショナリティ(政治的権力位置)をしめす権力的沈黙(都合の悪い時には沈黙してしまう態度、連帯しよう(日本人)、だったら基地を日本に持って帰るのが一番の連帯!(沖縄人)--------- (権力的沈黙)(日本人)
沖縄にある米軍基地は、本来、「本土」の責任において引き受けるべきものなのに、「本土」はその責任を果たしていない。県外移設要求は、その責任を果たす事を求めているのである。日米安保体制を成り立たせている「本土」にではなく、小さな沖縄にその意に反して多くの基地がおかれているところに、在日米軍基地をめぐる根本的矛盾がある。 県外移設とは、この矛盾を解消し、在沖縄米軍基地を、安保体制下において本来あるべき場所に戻すという意味を持っているのである。
私もその一人である現在の日本国民は、敗戦直後の昭和天皇の発想から何ほども抜け出られていないということになるだろう。
反戦平和運動=日米安保条約破棄=在日米軍基地撤去 この構図が県外移設をタブー化
護憲派(リベラル左派)に位置する人々はいまやこの点で根本的な自己点検を求められている。
沖縄から日本に基地を持ち帰る運動を同じ日本人に向けて展開しなければならない。野村氏
沖縄の反基地運動は反戦平和運動のためにあるわけではない。2度と沖縄戦のような悲惨な戦場にされないために、生き延びるために、基地のない沖縄でただ静かで平穏な生活を送りたいために、自分たちを脅かすものに対してやむをえず抗議の声をあげているのである。
沖縄を「悪魔の島」(ベトナム戦争時沖縄から北爆に出撃)にした張本人は基地を押し付けた日本人
全国で「平等負担」に努めるならば、一都道府県あたりの負担増はごくわずかである。
本土の沖縄化に反対するという反基地運動の発想とスローガンに「日本の「中華思想」的感覚」が潜んではいないか? 大江氏 本土の本土による本土のためのスローガン 野村氏
沖縄の日本国家からの離脱(独立ではない)新城氏
日本人・沖縄人、二項対立の脱構築 デリタの「脱構築」
韓国併合の論理を反復する「中国脅威論」 捨石としての沖縄 皇土防衛
目次
第1章 在沖米軍基地の「県外移設」とは何か(憲法九条にノーベル平和賞を?
「本土の人間がなしうる唯一の行動」とは ほか)
第2章 米軍基地沖縄集中の歴史と構造(基地はなぜ沖縄に
日本政府が求めた海兵隊の「沖縄駐留維持」 ほか)
第3章 県外移設を拒む反戦平和運動(県外移設を遠ざけてきた「反戦平和」
「安保廃棄、全基地撤去」はいつまでに ほか)
第4章 「県外移設」批判論への応答(知念ウシ氏と石田雄氏との往復書簡
戦後民主主義の政治学と県外移設 ほか)
終章 差別的政策を終わらせるために(県外移設要求に応えるのが「本土」の責任
韓国併合の論理を反復する「中国脅威論」 ほか)