図書館本
原題:The Plundered Planet, How to reconcile prosperity with nature? (2010)
最底辺の10億人(2008)、民主主義がアフリカ経済を殺す(2010)のコリアー教授である。
この2冊とも良い本だと思うのだけれど、西洋的上から目線の書だと感じた。ただ、MDGs(国連ミレニアムゴール、ジェフリーサック氏らが提唱している取り組み)に対しては全面賛成ではなく、反対のウイリアム・イースタリーとの中間に位置しているような感じだろうか。
さて本書 結論は
性急に繁栄を追い求めれば、自然の略奪に繋がる。責任をもって管理し自然の秩序が回復するなら、自然は人類に繁栄をもたらすかもしれないが、繁栄が自然の秩序を実現するとは言えない。
備忘録メモ
自然資源: 最底辺の10億人(この表現は的確ではないがテキスト通り書いておく)の国々。2005年―08年、約1兆ドル相当が採掘 当事国には?
人材の流出 富裕国の研究所へ引き抜かれる
自然+技術+法規=繁栄 最貧国はこの公式をマスターしていない(本当にそうかな??)
自然+技術−法規=略奪 最貧国
開発途上国の農業経済に対する富裕国の姿勢は改革と保存の両方を望むという矛盾。
自然+法規−技術=飢餓
環境保護主義者と経済学者の関係性 経済学者と功利主義(最大多数の最大幸福)
ハイチの森林資産(国土の60%)はすでに無い
クウェート 石油収入を将来のためにファンド化、 ザンビア 銅山の無秩序採掘
シェラレオーネのダイヤモンド、ナイジェリアの石油
アフリカ 資源輸出はアフリカ全体のGDPの30%
マレーシア 輸出収入で産業の多様化 ボツワナのダイヤモンド輸出も同様
ノルウエー 原油収入を政府系ファンドで次世代へ
オランダ病 北海天然ガス オランダギルダーの高騰 輸出産業停滞
地質調査の無償援助 中国だけ リスクも大きいがリターンも大きい
中国流 インフラ建設と引き換えに採掘権を得る 中国のアフリカ略奪との非難はおかしい。
イギリス 費用便益分析 公共事業(インフラ等)には30%多めに見積もる提言 それでも旨くいかない(渋滞解消にはなっていない) 世銀は途上国での費用便益分析は役立たないと指摘
低所得国は中所得国の成功(マレーシア、ボツワナ等)を参考にすべき
補助金で得た外国漁船団の乱獲 監視船を援助(中国がシェラレオネ)、最初の拿捕船が中国船籍
炭素の排出権トレード:中世の免罪符売買と同じ オバマは財政赤字の埋め合わせが出来る
地球温暖化抑制のために原発 (現著出版時に福島原発爆発はない)
共同幻想1. 小農礼賛(チャールズ皇太子)は都市部の中流層だけ
グローバルな土地取引(農業) 食料大口輸入国の中で日本だけがアフリカの土地に押しかけなかった
共同幻想2.遺伝子組み換え作物の禁止 アメリカとヨーロッパの差 禁止解除でヨーロッパは穀物生産量15%増
アフリカはバイオ革命が必要(遺伝子組み換え、化学肥料)
共同幻想3.バイオ燃料ブーム アメリカ 補助金で穀物から燃料 ブラジルの砂糖キビは正しい
上記3つの共同幻想を捨て、大規模農業、遺伝子組み換え作物の導入、エタノール生産への補助金打ち切りが経済的にも政治的にも良い組み合わせ アメリカとヨーロッパでバーター?
EITI:支払い内容公表運動から採取産業透明イニシアチブへ NGO からボトムアップ (MDGsに対するコリアーの主張でもあるかな)
炭素排出権を国別でなく産業別で統一的に扱うべき
目次
はじめに
第1部 自然の倫理
第1章 貧困と略奪
環境保護主義者と経済学者は敵対するのか
第2章 自然は特別か
自然は誰のものか/最大多数の最大幸福/カストディアンの倫理規範/ブラジルの有権者に熱帯雨林の運命を決する権利はあるか
第2部 資産としての自然
第3章 資源の呪い
資源価格の高騰はよいことか/資源の呪いはなぜ起きるのか/資源富裕国で民主主義は機能するか/資源活用のための決定の連鎖
第4章 自然資産の発見
四つのグループに散らばる資源 発見のジレンマ 公共財としての地質調査
第5章 自然資産の価値の確保
賄賂を防ぐには/情報の非対称を解決する/税のジレンマ/採掘事業を国有化しないのはなぜか/ほんとうに深刻な問題は何か
第6章 持続不能な収入
国家収入の幻想/持続不能を持続する/自然資産の価格は上昇し続けるのか/手の中の鳥/資本の欠乏/資源ブーム/未来の略奪/チャイナ・ディール方式による投資の確保/放置された義務
第7章 投資への投資
投資機会はどこに/公共投資の改善/民間投資の奨励/資本財の価格抑制/景気後退期こそチャンス
第3部 生産工場としての自然
第8章 魚は自然資産か
思考実験/魚を捕る権利/ささやかな提案
第9章 自然の負債
罪の報いとご都合主義的な倫理観/低炭素社会の姿/産業の移転に伴う排出量分布の変化/同じ害には同じ税金を/共通課税の地政学/被害者と悪役/バック・トゥ・ザ・フューチャー/炭素とロブスターはなぜ似ているか
第4部 誤解された自然
第10章 自然と飢餓
なぜ食料価格は上昇したのか/高い食料で痛手を被るのは誰か/第一の共同幻想――小農礼賛/第二の共同幻想――遺伝子組み換え作物の禁止/第三の共同幻想――バイオ燃料ブーム/政治への期待
第5部 自然の秩序
第11章 自然の秩序の回復
最貧国の資源を活用するために/略奪に加担しない責任/ 国際協調の実現
索引
原題:The Plundered Planet, How to reconcile prosperity with nature? (2010)
最底辺の10億人(2008)、民主主義がアフリカ経済を殺す(2010)のコリアー教授である。
この2冊とも良い本だと思うのだけれど、西洋的上から目線の書だと感じた。ただ、MDGs(国連ミレニアムゴール、ジェフリーサック氏らが提唱している取り組み)に対しては全面賛成ではなく、反対のウイリアム・イースタリーとの中間に位置しているような感じだろうか。
さて本書 結論は
性急に繁栄を追い求めれば、自然の略奪に繋がる。責任をもって管理し自然の秩序が回復するなら、自然は人類に繁栄をもたらすかもしれないが、繁栄が自然の秩序を実現するとは言えない。
備忘録メモ
自然資源: 最底辺の10億人(この表現は的確ではないがテキスト通り書いておく)の国々。2005年―08年、約1兆ドル相当が採掘 当事国には?
人材の流出 富裕国の研究所へ引き抜かれる
自然+技術+法規=繁栄 最貧国はこの公式をマスターしていない(本当にそうかな??)
自然+技術−法規=略奪 最貧国
開発途上国の農業経済に対する富裕国の姿勢は改革と保存の両方を望むという矛盾。
自然+法規−技術=飢餓
環境保護主義者と経済学者の関係性 経済学者と功利主義(最大多数の最大幸福)
ハイチの森林資産(国土の60%)はすでに無い
クウェート 石油収入を将来のためにファンド化、 ザンビア 銅山の無秩序採掘
シェラレオーネのダイヤモンド、ナイジェリアの石油
アフリカ 資源輸出はアフリカ全体のGDPの30%
マレーシア 輸出収入で産業の多様化 ボツワナのダイヤモンド輸出も同様
ノルウエー 原油収入を政府系ファンドで次世代へ
オランダ病 北海天然ガス オランダギルダーの高騰 輸出産業停滞
地質調査の無償援助 中国だけ リスクも大きいがリターンも大きい
中国流 インフラ建設と引き換えに採掘権を得る 中国のアフリカ略奪との非難はおかしい。
イギリス 費用便益分析 公共事業(インフラ等)には30%多めに見積もる提言 それでも旨くいかない(渋滞解消にはなっていない) 世銀は途上国での費用便益分析は役立たないと指摘
低所得国は中所得国の成功(マレーシア、ボツワナ等)を参考にすべき
補助金で得た外国漁船団の乱獲 監視船を援助(中国がシェラレオネ)、最初の拿捕船が中国船籍
炭素の排出権トレード:中世の免罪符売買と同じ オバマは財政赤字の埋め合わせが出来る
地球温暖化抑制のために原発 (現著出版時に福島原発爆発はない)
共同幻想1. 小農礼賛(チャールズ皇太子)は都市部の中流層だけ
グローバルな土地取引(農業) 食料大口輸入国の中で日本だけがアフリカの土地に押しかけなかった
共同幻想2.遺伝子組み換え作物の禁止 アメリカとヨーロッパの差 禁止解除でヨーロッパは穀物生産量15%増
アフリカはバイオ革命が必要(遺伝子組み換え、化学肥料)
共同幻想3.バイオ燃料ブーム アメリカ 補助金で穀物から燃料 ブラジルの砂糖キビは正しい
上記3つの共同幻想を捨て、大規模農業、遺伝子組み換え作物の導入、エタノール生産への補助金打ち切りが経済的にも政治的にも良い組み合わせ アメリカとヨーロッパでバーター?
EITI:支払い内容公表運動から採取産業透明イニシアチブへ NGO からボトムアップ (MDGsに対するコリアーの主張でもあるかな)
炭素排出権を国別でなく産業別で統一的に扱うべき
目次
はじめに
第1部 自然の倫理
第1章 貧困と略奪
環境保護主義者と経済学者は敵対するのか
第2章 自然は特別か
自然は誰のものか/最大多数の最大幸福/カストディアンの倫理規範/ブラジルの有権者に熱帯雨林の運命を決する権利はあるか
第2部 資産としての自然
第3章 資源の呪い
資源価格の高騰はよいことか/資源の呪いはなぜ起きるのか/資源富裕国で民主主義は機能するか/資源活用のための決定の連鎖
第4章 自然資産の発見
四つのグループに散らばる資源 発見のジレンマ 公共財としての地質調査
第5章 自然資産の価値の確保
賄賂を防ぐには/情報の非対称を解決する/税のジレンマ/採掘事業を国有化しないのはなぜか/ほんとうに深刻な問題は何か
第6章 持続不能な収入
国家収入の幻想/持続不能を持続する/自然資産の価格は上昇し続けるのか/手の中の鳥/資本の欠乏/資源ブーム/未来の略奪/チャイナ・ディール方式による投資の確保/放置された義務
第7章 投資への投資
投資機会はどこに/公共投資の改善/民間投資の奨励/資本財の価格抑制/景気後退期こそチャンス
第3部 生産工場としての自然
第8章 魚は自然資産か
思考実験/魚を捕る権利/ささやかな提案
第9章 自然の負債
罪の報いとご都合主義的な倫理観/低炭素社会の姿/産業の移転に伴う排出量分布の変化/同じ害には同じ税金を/共通課税の地政学/被害者と悪役/バック・トゥ・ザ・フューチャー/炭素とロブスターはなぜ似ているか
第4部 誤解された自然
第10章 自然と飢餓
なぜ食料価格は上昇したのか/高い食料で痛手を被るのは誰か/第一の共同幻想――小農礼賛/第二の共同幻想――遺伝子組み換え作物の禁止/第三の共同幻想――バイオ燃料ブーム/政治への期待
第5部 自然の秩序
第11章 自然の秩序の回復
最貧国の資源を活用するために/略奪に加担しない責任/ 国際協調の実現
索引