図書館本

筆者を少し知っているので書きにくい部分もあるが忖度無しに読書メモとする。

新型コロナパンデミックが始まり(2020年とする)はや3年経ちました。
誰もが当初は世界的な広がりになるとは想定していなかったでしょう。
コロナウイルスの専門家(人間および動物のコロナウイルス研究者)もそのように
発言した方もいました。
単なるこれまで私たちが経験したウイルス感染症であれば、
感染源、感染経路、宿主の3要素を歴史と経験(感染防御方法など)により対処したのでしょう。
武漢からの感染拡大でいち早く中国からウイルス遺伝子情報が発せられ、PCR法による診断法が
確率した事は承知の事実。また、信じられない速さでワクチンが開発されたのも事実。
残念なのは、感染経路対策がロックダウンであったり3密を避ける等のある意味物理的対策に
終始してしまったことでしょうか(ある意味しょうがないと思います)

筆者が指摘する、種々なコロナ対策も確かに間違いではないと思いますが、発信当時は科学的エビデンスがあったかどうかは疑問が残ります。逆に医科研の河岡先生のグループは着々と実験によってウイルス拡散のモデルなどを提唱していたと記憶しています。

今回のパンデミックは包括的な対策がまさにすべての専門家(ウイルス学、免疫学、公衆衛生学、経済学等々)が議論すべきであり(だから政治というプラットフォームが必要)、リスクを最小限にして人命と財産を守ることが第一義だったと思います。

ちなみに著者は間違いなくウイルス学分野では優秀な研究者であり世界的にも評価されています。
残念ながらTV等の発言で一部の言説を「切り取られて」批判されているのも事実です。
彼自身がTV等で儲けようとか有名になりたいとも思っていないことは私が証人になります。
逆に何ら研究業績もなく論文偽造の疑いがある元国立研究所の研究員(一番低い肩書)が
TVやメディアでちやほやされ、根拠ないデータを流布していることを考えると、著者が
しっかりと良い番組で十分な時間を与えられれば違った展開になっていたとも思います。

また、著者が獣医であることで、人間の病気について語るなとか、まったくチンプンカンプンな
指摘をする臨床医や免疫学者がいたりするのも残念ですね。(one healthや汎動物学:人間と動物の病気を一緒にみるを知らないのでしょうか)

一点 重箱の隅を突いておこうと思います(笑)
獣医6年制に関しての表記ですが、著者は1964年生まれで東大現役入学ですよね。
1978年(昭和53年)に「修士課程積上げ6年制」となり4年と2年を大学で過ごすと獣医師免許受験資格が与えられました。(私がまさにこの昭和53年入学)その後、完全6年制
本書の中で学生の頃に6年制になったというのは完全6年制の事かな。

今回のコロナパンデミックは科学者の社会的責任としての取り組みですね。
ご参照あれ、唐木順三「科学者の社会的責任」についての覚え書 (ちくま学芸文庫)

ウイルス学者の責任 (PHP新書)
宮沢 孝幸
PHP研究所
2022-03-25




今度はこんな本も出したのね。
ウイルス学者の絶望 (宝島社新書)
宮沢孝幸
宝島社
2023-02-10


これも読まれると良いですよ。