堆積汚泥・私はこう向き合う/異様な富士川水系、歩いて調査を 佐藤駿佑博士(海洋科学)【サクラエビ異変 母なる富士川】|あなたの静岡新聞




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不法投棄により富士川水系に流出したとみられる高分子凝集剤入り汚泥(ポリマー汚泥)の分析実験を行った高分子化学が専門の佐藤駿佑氏(30)は10日までに静岡新聞社の取材に応じ、「水系のありさまは異様だ。河川にポリマー汚泥が残留している可能性が極めて高い」と指摘した。その上で、石油由来の高分子凝集剤の代替製品となり得る天然由来の凝集剤開発が必須と警鐘を鳴らした。


 −富士川水系を何度も訪れた感想はいかがですか。
 「山には自然があり生物も見つけた。しかし、川は暗い灰色で見たことがない川になっていた。人工的というか自然の中で川だけが浮いている印象。弾力が強い泥は、住民も『これまで見たことがない』と話していた」
 −日本軽金属雨畑ダムの堆砂も見ました。
 「ポリマー汚泥の不法投棄現場と雨畑ダムは同じ富士川水系雨畑川にあり、1キロも離れていない。長年不法投棄していたのは、ダム管理企業が出資する採石業者。水系を荒廃させ『死の川』にしたきっかけは、ダムの大量堆砂だ。その処理が違法なポリマー汚泥の河川内投棄を誘発した側面はないのか」
 −富士川水系に残留するポリマー汚泥の実態調査をする山梨・静岡両県への期待はありますか。
 「アクリルアミドポリマー(AAP)が紫外線で分解され生じるアクリルアミドモノマー(AAM)検出のため、両県は富士川水系計11地点で各点200ミリリットル程度採取して調べている。1地点当たりの採水量が少な過ぎる。流域全体の安全性を保障するものには到底なり得ない。近辺で水を利用している特定の人がいて、その人のために行う調査なら理解できるが、『とりあえず爐覆き瓩箸いΔ海箸魍里める』という意図が透けて見える。最も危険なのは地下水系に入り込み、井戸などに流れ出たケースや、河川内の『ホットスポット』だ。実際に歩き、どこにそうした箇所があるか探すのが第一歩だ。ただ、両県が目指すべきは富士川水系の自然環境の回復であり、人と自然の共栄だ。汚泥の除去はその前提条件にすぎない」
 −環境への深刻な負荷に対処する新法のプラスチック資源循環法成立をどう見ますか。
 「石油由来のプラスチック製品の抑制だけでなく、代替品の開発にこそ重点的に国の予算を配分するべきだ。環境中に放たれた高分子凝集剤の特定や回収は技術的に困難で、コストが伴う。そうすると、不法投棄がはびこるという悪循環が生じる。そこには構造上の欠陥がある」=随時掲載します
 (「サクラエビ異変」取材班)

 さとう・しゅんすけ 1990年生まれ。博士(海洋科学)。2018年3月、東京海洋大大学院海洋科学技術研究科応用環境システム学専攻卒業。同大学術研究院技術補佐員として天然凝集剤の研究開発に従事するなどした。東京都出身。