「新築の家を壊すのか」 調布・道路陥没、住民の仮移転は2年以上か | 毎日新聞


絶対安全だって言われてましたよね。原発みたい。

「東京都調布市の住宅街で道路が陥没した事故の発生から半年がたった。現場の地下約47メートルで東京外郭環状道路(外環道)のトンネル工事をしていた東日本高速道路は、周辺の住宅を取り壊して地盤を補修し、住民に同じ場所の新たな住宅に戻ってもらう「仮移転」を提案した。対象は約40戸に上る。2年以上かかるとみられる移転期間と前後の引っ越しを住民は受け入れられるのか。工事の行方は依然、不透明なままだ。

3月に新居に引っ越してきたばかりの男性。仮移転の提案に気持ちが整理できていない=東京都調布市で2021年4月、島袋太輔撮影
「仮移転」40戸 「住み直せるのは何年後か」

 「引っ越してきたばかりだが、家を壊すのか」。4月2日に調布市で開かれた周辺の住民への説明会。現場のほど近くに新築の2階建て住宅を構え、3月下旬に住み始めたばかりの男性(48)が東日本高速道路の担当者をただした。

 思いもよらない事故だった。2020年10月18日。念願かない建築し始めたマイホームの近くで、道路に長さ5メートル、幅3メートル、深さ5メートルの穴が開いた。周囲の地中からは三つの空洞が相次いで見つかった。新居の土地は父親から相続し「静かで京王線の駅に近い」と気に入った。IT関連会社に勤務し、家族は妻と小学生の息子2人。不安を抱えながらも、できあがっていく家を見守るしかなかった。


 だが、東日本高速道路の工事責任者からの回答はにべもなかった。「地盤補修には直上から工事をする必要がある。家があると工事ができない」。補修を必要とする地盤は事故現場の南北360メートル、幅16メートルの範囲にわたるという。

 東日本高速道路は仮移転の全体像を明示していないが、取材に対し「40戸程度」と説明。住宅再建や引っ越しにかかる費用は全額、東日本高速道路が負担する。仮移転に応じずに住宅の買い取りを希望する人にも「個別に対応する」(広報担当者)としている。

 男性は新居が仮移転の対象となるかもしれないとの説明を事前に受け、こうした回答を予想していた。それでもショックは大きく「住み直すのは何年後か。気持ちの整理がつかない」。

 動揺する住民は男性だけではない。仮移転の提案を受けたという近田真代さん(73)は住宅展示場に繰り返し通った末に建てたという愛着たっぷりの家に暮らす。「費用が出るといっても、2回引っ越しをする労力や帰って来られる時期のことを考えてしまう」

 地中深くの土地利用の促進について定めた大深度地下利用法は地下40メートル以深の工事を住民の同意なく行えるとしており、地上に影響が生じる事態を想定していない。それでも事故は発生し、東日本高速道路の有識者委員会(委員長、小泉淳・早稲田大名誉教授)が今年2月にまとめた報告書は、トンネル工事と事故の因果関係を認めている。

 仮移転に応じることは住民にとって義務ではない。武田真一郎・成蹊大教授(行政法)は「事業者は住民の同意を得ずに工事の認可を受けたのだから、仮移転の必要性について、全住民が納得できるよう非常に高度な説明責任を負う。その上で全面的な賠償・補償が必要になる」と指摘する。

 一方で仮移転の対象にならない周辺の住民も、土地の資産価値が下落するのを恐れている。地元不動産業者は一般論と断った上で「取引価格は通常より下がる可能性がある」と話した。【島袋太輔、青島顕】

住民説明会で、東日本高速道路の責任者に地盤補修について質問した男性(中央)。男性の新居は仮移転の提案を受けている=東京都調布市で2021年4月2日午後8時8分、島袋太輔撮影
東日本高速 地盤補修だけで「2年」

 今回の工事は、東京都世田谷区の東名高速道路と練馬区の関越自動車道をつなぐ16・2キロの区間で、並行する2本のトンネルを掘っている。事故現場の真下にあるのは、東日本高速道路が整備しているトンネルだ。近くを通るもう1本のトンネルは中日本高速道路が受け持つ。

 東日本高速道路は地盤補修の作業だけで「おおむね2年」かかるとしており、前段となる仮移転がスムーズに進むかは見通せない。中日本高速道路のトンネルも工事はストップし、再開時期は示されていない。工事の再開にはかなり時間がかかるとみられる。

 東日本高速道路によると地盤補修の工法は3案あり、どれを採用するかは今後決める。稲積真哉・芝浦工大教授(地盤工学)によると、東日本高速道路が検討する工法3案のうち、水ガラスなどを地中に浸透させて固める「薬液注入工法」は、建物脇の道路から薬液を注入する。建物の直下にも薬液の効果が及ぶため、仮移転なしでも可能とみられる。18年の北海道胆振(いぶり)東部地震で深さ3〜3・5メートルの地盤が緩んだ札幌市の住宅街の再建に活用された実績がある。

 地盤補修にあたる深さの程度は未定だが、東日本高速道路の広報担当者は「確実に補修するには直上から工事しなければならない。基本的に仮移転が必要だ」と強調。国土交通省幹部は「補修するには2年かそれ以上はかかるので、その間は仮移転してもらわないといけない。東日本高速道路は地元の人に誠心誠意、対応していくしかない」と指摘する。

 これに対し、稲積教授は「地下10メートルほどの地盤改良なら(住民を)立ち退かせる必要はない」と指摘し、仮移転の必要性に疑問を投げ掛ける。さらに「安全性を考え、地下約40メートルの深い地盤まで改良したいのではないか」と述べ、中日本高速道路によるトンネルの工事も見据えた地盤補修が実施されるとの見方を示す。

 一部住民の代理人を務める郷原信郎弁護士は東日本高速道路の有識者委員会による事故原因の調査は不十分だとして「一時移転(仮移転)の提案は時期尚早。住民に事故原因を十分説明することが先決だ」と話す。【島袋太輔、岩崎邦宏】







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