富士山登山鉄道 静岡、山梨で温度差 技術、安全性…課題多く|静岡新聞アットエス


銭ばかり要求する山梨県ですね。

富士山は泣いている。


以下記事

富士山登山鉄道 静岡、山梨で温度差 技術、安全性…課題多く
(2021/2/22 09:10)


 富士山の山梨県側の麓と吉田口5合目を結ぶ「富士山登山鉄道構想」が2月中旬、山梨県の有識者検討会によってまとめられた。山梨県はこれをたたき台に国や自治体、関係者と議論を重ねる方針だが、静岡県側の関心は低調だ。世界遺産としての「顕著な普遍的価値」の継承に鉄道開発が適すのか疑問も根強い。両県の温度差に加え、技術面や安全性など課題は多く、実現の行方は見通せない。
 「富士五湖や周辺までを含め、これからの時代の富士山観光を考える契機にしたい」
 今月8日、国会内で開かれた検討会の総会。2年前の知事選で自らの公約に鉄道構想検討を掲げた長崎幸太郎山梨県知事は、委員らを前に熱弁した。
 ■前のめり
 構想は「富士山の保存と適切な利用を高次元で調和させる」との観点を前提に、既存の有料道路「富士スバルライン」上に架線を使わない次世代型路面電車(LRT)を敷設するとした。富士山へのアクセス方法を自動車から転換させ、環境負荷の抜本的な改善や来訪者数の調整を図る。
 長崎知事は、まず地元などの理解を得るとしたが、「一日も早い開業を目指す」「世界から祝福されるように進めたい」と前のめりな発言も目立った。

 ■冷ややか
 これに対し、静岡県側には静観の雰囲気が漂う。静岡県富士山世界遺産課の担当者は「開発行為となれば慎重な検討が必要。世界に認められた価値が損なわれることがあってはならない」と指摘する。御殿場ルート7合4勺(しゃく)の山小屋「わらじ館」のオーナー橋都彰夫さんは「山梨県の話なので反対する理由はないが、環境に配慮するのなら電気バスなどでもいいのでは」と話す。
 御殿場、須走、富士宮の各登山ルートの来訪者数がどう変化するかなど、静岡県側への影響は十分考慮されておらず、県東部の国会議員は「地元で(鉄道構想が)話題になることはほとんどない」と冷ややかに見る。

 ■23日説明
 両県は共に富士山の世界遺産登録実現を成し遂げ、連携して保全管理に取り組む。こうした点を踏まえ、検討会では理事の松浦晃一郎・元国連教育科学文化機関(ユネスコ)事務局長が「富士山を全体として捉え、静岡県側を巻き込む必要がある」と注文を付けた。
 長崎知事は「富士山の日」の23日に御殿場市で行われるイベントで、川勝平太静岡県知事に構想を直接説明する意向。「なぜこの登山鉄道を目指すのかという問題意識を共有したい」とする長崎知事に対し、川勝知事の出方が注目される。

 ■事業成立の可能性「高い」
 山梨県の富士山登山鉄道構想は、敷設区間を山麓から5合目までの約25〜28キロと位置付け、所要時間は上り約52分、下り約74分を見込む。往復運賃1万円で年間約300万人が利用すると試算し、「事業成立の可能性は高い」と評価した。整備費は約1400億円、事業主体は民間を想定する。
 ただ、世界遺産ゆえのハードルは少なくない。富士山世界文化遺産学術委員会は山梨県の検討会に対し、開発による遺産の影響評価(HIA)を事業段階だけでなく、その前の計画段階でも実施するよう提言した。HIAは政府によるユネスコへの提出を想定して行う評価で、構想ではこの考え方が全面的に盛り込まれた。
 このほかにも、法律に基づく事業認可の取得▽文化財保護法、自然公園法、森林法といった土地利用に係る各種法制度への対応▽厳冬期も含めた車両の登坂、制動性能の検証▽噴火時の危機管理―など課題は山積する。
 長崎知事主導で進む構想に地元首長から不満の声が上がるなど、山梨県側も“一枚岩”とは言えない状況だ。