図書館本

初めて読ませていただく著者(1941-)です。
沢山の著作や翻訳を出されています。
本書は1975年に家族で外房に移住した著者の生きて来た記録。
哲学というタイトルが入っていますが、哲学や書籍からの引用を田舎暮らしのシーンに上手く
クロスオーバーさせていて田舎暮らし生活が非常に著者にとっても家族にとっても実りある
キラキラした輝きを放っています。
家庭菜園、地元共同体での活動、家族との対話、自然との対話、ネコとの生活。
ヒト―ヒト、ヒト―動植物、ヒトー自然 そんな関係性を織り込んでいます。
福岡正信さんとの出会いと実践(最終的には化学肥料と農薬は使わない)など色んな
チャレンジをされている。

エピローグで木原さんは書きます。
感動とは、わが身に新しい感覚が発生したことの自覚、「素晴らしき新世界」の発見である。
知識を愛するという哲学の本来の意味合いからすれば、田園は哲学の宝庫であり、ひと茎の草も
森羅万象に係わる思索へお誘う力を秘めている。類は友を呼ぶように、知識は知識をたぐりよせ、
とどまることがない。
中略
田舎暮らしのなかにも、さまざまな対象について、「知る」「好きになる」「楽しむ」という
三段階があり、田園の豊かな自然のなかでの40年間の生活は、この三つの言葉に要約されるようである。 生活を「楽しむ」ことについて、最も気に入っているのは「花道のつらね」の次の狂歌である。
たのしみは春の桜に秋の月 夫婦仲よく三度くふめし (五代目市川団十郎)

田舎暮らしと哲学
木原 武一
新潮社
2017-09-29