<リニア不正>JV受注15件、焦点に 4社調整解明へ (毎日新聞) - Yahoo!ニュース
12/18(月) 22:32配信


リニア中央新幹線の建設工事を巡る東京地検特捜部の捜査は、偽計業務妨害容疑で大林組を捜索してから10日目の18日、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で鹿島と清水建設を捜索する事態に急展開した。大成建設も加えた「スーパーゼネコン」4社がそれぞれ中心となった共同企業体(JV)はリニア関連工事22件の約7割にあたる15件の工事を受注しており、これらの工事にも不正な受注調整があったのかどうかが今後の焦点となる。【平塚雄太、巽賢司、渡辺暢】



 大林組は、JR東海側が発注する「名城非常口」(名古屋市中区)の工事で、JR東海社員に非公開の上限価格を漏えいさせた上で、他社に業者選定手続きへの参加を辞退するよう働きかけていた疑いが浮上。昨年4月、他社よりも有利な立場で契約締結を実現させたとされる。

 特捜部の捜査は当初、大林組1社が他の3社などを排除し、JR東海側から不正に工事を受注した構図で進むかに見えた。しかし、特捜部は大林組と他の3社が受注調整していた疑いを強め、公正取引委員会と合同で独禁法違反容疑による強制捜査に踏み切ったとみられる。これによって捜査対象は名城非常口に限らず、15件の工事に広がることになった。

 リニア関連工事は公的資金の融資を含む総事業費9兆円の巨大事業。「4社のような大手でなければ実施できない難しい工区もある」(ゼネコン関係者)のが実情だ。

 しかし、ある検察幹部は「元々、普通の建設会社では参入できないような排他的な状況がありながら、さらに4社で受注を事前調整していたとしたら悪質だ」と指摘し、業界につきまとう「談合体質」を追及する構えだ。

 ◇「余裕なく、工事止められぬ」

 リニア中央新幹線の品川−名古屋間で契約済み工事の7割を請け負う4社が受注調整をしていた疑いが浮上し、2027年開業を目指す工期への影響も懸念される事態にある。

 「工程に余裕はなく、工事は何が何でも止めるわけにはいかない」。18日、東京地検特捜部と公正取引委員会による鹿島、清水建設への捜索を受け、リニア建設の事業主体・JR東海の幹部はそう強調した。先行開業する品川−名古屋間の建設費は5兆5000億円余。JR東海は15年8月以降、鉄道・運輸機構への委託分を含めて22件の工事で契約を結んだ。その中で、大手ゼネコン4社をそれぞれ中心とする共同企業体(JV)が15件の工事を分け合い、うち11件で工事が始まっている。

 JR東海の柘植康英社長は、大林組が捜索された後の13日の定例記者会見で「影響が出ることは想定していない」と述べ、品川−名古屋間の開業は計画通り進める考えを強調した。当面は工事の中止や受注者選定手続きの見直しをしない方針を示している。【野村阿悠子、黒尾透】