リニア、五輪後も続く「魅力的な工事」 談合復活の疑い:朝日新聞デジタル


備忘録

リニア中央新幹線の建設工事に関する入札で不正があったとして、東京地検特捜部が8日、偽計業務妨害の疑いでゼネコン大手の大林組本社(東京都港区)を捜索していたことが関係者の話でわかった。大阪府枚方市の官製談合事件で社長が引責辞任してから10年。スーパーゼネコン大林組に、不正な入札の関係先として、再び強制捜査のメスが入った。舞台となったのは巨大プロジェクトでもあるリニア中央新幹線をめぐる工事。関係者には動揺が広がった。

 スーパーゼネコンと呼ばれる大林組、鹿島、大成建設、清水建設の4社が、制裁強化の改正独占禁止法が施行される直前の2005年12月に談合決別宣言を行って以降、日本各地の建設談合組織は事実上の活動停止に追い込まれた。

 だが、それでも談合を継続していた名古屋市発注の地下鉄延伸工事では07年に検察当局、公正取引委員会が摘発に乗り出し、談合の仕切り役だった大林組名古屋支店元顧問らが逮捕、起訴される事態となった。さらに、大林組は大阪府枚方市の清掃工場建設工事の談合事件でも摘発され、当時の社長が引責辞任した。

 その後、ゼネコン各社による談合は根絶したとみられていたが、公共事業費の減少で苦境にあった建設業界で、11年の東日本大震災による復興・復旧工事が急増。首都圏での再開発やインフラ整備も増加し、複数の業界関係者が、大手ゼネコンを中心とした受注調整など不正入札が復活した疑いを指摘する。スーパーゼネコン幹部は「1千億円超の大型工事が増えると工事にかかる資金負担が可能なスーパーゼネコンが受注の中心で、スーパーゼネコン同士が調整しやすい入札になっている」と証言した。

 今年9月には、総工費1兆6千億円で建設中の東京外郭環状道路(外環道)の地下トンネル拡幅工事4件で発注元と業者の契約手続きが中止された。4件をそれぞれ受注したのは大林組などスーパーゼネコン4社の共同企業体。発注元が調査した結果「談合などの疑義を払拭(ふっしょく)できず、契約の公平性を確保できないおそれが生じた」と公表した。

 スーパーゼネコン4社の17年3月期決算では、東京五輪がある20年に向けた大都市の再開発ラッシュなどを背景に純利益が2年連続で過去最高を更新する好況ぶりだ。だが、業界内では「ピークは五輪直前まで」の見方が多い。ゼネコンにとってリニア事業は五輪後も続く、魅力的な工事だ。

 ただし、今回の捜索は偽計業務妨害容疑で、不正入札の疑いが大林組だけにとどまるものか、他の受注各社も関与したものかは現段階では判然としていない。

 総事業費9兆円とされるリニア中央新幹線の入札でどのような疑惑があるのか。特捜部による全容解明が期待される。(編集委員・市田隆)

「大林組だけで済むのかどうか」

 リニア工事を発注するJR東海は「報道で把握したばかりであり、大変驚いている。当社としては何も承知していない」とのコメントを出した。

 同社は、リニア中央新幹線の品川―名古屋を2027年に、名古屋―新大阪を最速で37年に開業させる計画だが、もともと「余裕のない厳しい工程」(柘植康英社長)。捜査がスケジュールに影響を与えるかどうかが注目される。

 工事が始まっている品川―名古屋は、286キロのうち9割近くがトンネル。中でも南アルプスを貫くトンネルは難工事が予想されているうえ、自然環境への影響をめぐって静岡県と対立している。品川―名古屋で約5千人にのぼる地権者との交渉や工事で出る土の処理も課題となる。残土は東京ドーム約45杯分という。

 一方、鉄道を所管する国土交通省では、職員たちが休日返上でJR東海に問い合わせるなど、情報収集に追われた。

 「もう本当にびっくりした。寝耳に水とはまさにこのこと。事前に何も知らされていなかった」。ある鉄道局幹部はこう驚きつつも、リニア計画全体への影響については、「どの工事が対象かによって影響は異なる。他のゼネコンで代替可能なら影響は少ないだろう」と冷静に語った。

 別の国交省幹部は「気がかりなのは広がりだ。はたして、大林組だけで済むのかどうか」と不安を口にした。(伊藤嘉孝、友田雄大、吉野慶祐)