電通と原発報道(2012)、原発広告(2013)、原発広告と地方紙(2014)と原発(核発電)の安全安心神話が広告という文脈で人々を洗脳させることで構築されてきたことを本間氏は示してきた。
そして本書では、その総括としていかに広告という媒体が国民を洗脳(刷り込み)するのに使われたかという証拠をこれでもかというほど提示している。

広告と言う文脈では、保守系の雑誌広告(新聞や電車の中吊り)の歴史的考察をしている
「憎悪の広告」 能川 元一、 早川 タダノリ (2015)なども本書と同じプロパガンダ系であろう。そして、早川タダノリ氏の「原発ユートピア日本」(2013)も電力会社の広報、広告を通しての洗脳の歴史を実物の画像等で説明している。

オリンピックのエンブレム問題、そして東京誘致でのコンサル問題、原発立地対策等々、常に名前が登場する広告代理店「電通」に対してなぜメディア(テレビ、新聞)は及び腰なのかは本書を読まれると理解できるでしょう。

東電(各電力会社)、電事連、NUMOの3本柱によるプロパガンダ体制の歴史もわかる。

さて備忘録メモ
欧米の広告会社:スポンサーのためにメディアの枠を買う
日本:(メディアのために)メディアの枠をスポンサーに売る
メディアは電博(電通と博報堂)に広告を売ってもらう
電力9社の普及開発関係費(1970−2011) 2兆4179億円 (地域独占で競合が存在いないにもかかわらず)
電気料金 総括原価方式 広告代はすべて電気料金に含まれる
原発立地県と電気消費地で異なるメッセージ (地方紙広告 全国紙広告)
東電の広告費 不祥事が生じるたびに増加 2011まで年間200億
広告費=メディアに対する暗黙の圧力 ある意味賄賂であり恫喝
プロパガンディスト(プロパガンダを流布する存在) 原子力産業協会(原子力ムラ)432社(2016年1月現在)
電事連:任意団体のために予算使途の開示義務がない。2000年以降 年間500億以上と推測
電事連の裏の顔:広告スポンサーとして原発のネガティブ記事や放送に関して執拗に抗議、修正を迫る
ローカルテレビ局に対する圧力
原発推進派ロビー、原発文化人・芸能人の利用
原子力の日ポスターコンクール
NUMO(原子力発電環境整備機構)による広告宣伝と広報 2000-
記事風の広告:記事なのか広告なのか分からない広告
HP上からの原発広告の削除(福島原発震災以後)
大手新聞社、雑誌社も過去の掲載広告事例集から原発広告削除 社会的責任の欠如

復活するプロパガンダ 2013- 著名人(デーモン小暮、舞の海)の発言を装って電事連の主張の展開
除染、核廃棄物等の広報(環境省)も電通が受注  41億
博報堂とADKの変節 2013年、2014年に日本原子力産業協会(原産協)に入会
2016年2月28日読売新聞 15段 電事連カラー (5000万近い?) 勝間和代、増田寛也、優木まおみ、橋本五郎 「資源無き経済大国 どうする?どうなる? 日本のエネルギー」
新潟県内限定 柏崎刈羽原発CM 2015年6月- 福島からの避難者が抗議

おわりに
「広告とは、見る人に夢を与え、企業と生活者の架け橋となって、豊かな文明社会を創る役に立つ存在だったはずだ。それがいつの間にか、権力や巨大資本が人々をだます方策に成り下がり、さらには報道も捻じ曲げるような、巨大な権力補完装置になっていた。そしてその最も醜悪な例が、原発広告(プロパガンダ)であった。」

原発プロパガンダ (岩波新書)
本間 龍
岩波書店
2016-04-21