社説 リニア着工 地元理解を最優先に | 信濃毎日新聞[信毎web]


ジャーナリズムがジャーナリズムとして機能している長野 
ある意味、信濃毎日の矜持だろう。そして伝統。

それに比して、山梨というのはやはりミニコミ誌だな。広告主様優先、行政発表を有り難くコピペさせていただきマス的体質。 調査報道という言葉はおそらく山梨には無いのでしょう。


以下記事
リニア着工 地元理解を最優先に

 リニア中央新幹線の本格工事が県内でも始まることになった。

 南アルプスの山岳トンネル(全長約25キロ)の県側の工区(約8・4キロ)で、JR東海が共同企業体と工事契約を結んだ。夏ごろには着工するという。

 東京(品川)―名古屋間の総延長286キロのうち、県内は52・9キロになる。大半がトンネルだ。中でも南アのトンネルは最も難しい工事とみられている。

 地表からの深さが最大約1400メートルになる。地下に圧力がかかり、大量出水も予想される。安全に最大限配慮して、慎重に工事を進めてほしい。

 JR東海は着工前にやるべきことがある。工事に対する地元住民の要望に真摯(しんし)に耳を傾け、可能な限り取り入れていくことだ。

 掘削口となる下伊那郡大鹿村は、まだ村内での工事開始に同意していない。決まっていないことが数多く残されている。

 特に村と周辺町村を結ぶ主要路の県道松川インター大鹿線の改良工事には課題が多い。トンネル工事が本格化すると1日最大1350〜1736台の工事用車両が通ると見込まれている。

 同線はカーブが多く、大型車の擦れ違いが難しい幅の狭い場所が目立つ。JR東海は渋滞緩和のため、県と共同で2カ所のトンネル新設と約650メートルの拡幅を計画している。

 村は工事車両の迂回(うかい)路設置や改良箇所増などを求めている。山に囲まれている村にとって、県道は生命線になっている。安全面の配慮を最大限求めるのは当然だ。

 村内だけで300万立方メートル以上と見込まれている残土の処理方法も未定だ。住民には生活や環境への影響を懸念する声もある。丁寧な説明が欠かせない。

 村はこれまで、作業用トンネル坑口数の削減、小渋川に架かるリニア本線の橋の地中化などをJR東海に要望してきた。多くは受け入れられていない。住民が納得する前に、工期を優先して着工することはあってはならない。

 大鹿村以外の市町村でも、工事に対する要望が数多く出ている。下伊那郡阿智村では、住民などでつくる社会環境アセスメント委員会が生活への影響を調べた。工事車両の通行量削減など11項目の対策を示し、村や議会にJR東海と協議することを求めている。

 柘植康英社長はおとといの記者会見で「地域との連携を大切にしながら計画を着実に進めたい」と述べている。地元住民との約束と受け止めたい。

(2月11日)

同日のコラム 


斜面

大鹿村は南アルプス赤石岳への登山口である。英国人宣教師ウォルター・ウェストンは1892(明治25)年8月に訪れた。登山前に泊まった宿の主人を後に著書で紹介している。まれに見る紳士だった、と

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隔絶された山奥の村は旅人を温かく迎えた。300年続く大鹿歌舞伎に息づいているもてなしの心だ。その穏やかな人口千人余の村を巨大プロジェクトが揺さぶっている。リニア計画である。南アルプスを貫通するトンネル工事の長野側の掘削口が大鹿だ

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15人ほどの集落、釜沢地区には坑口や工事用ヤードが設けられ、工事が始まれば大型車両が頻繁に入る。赤石岳に源を発する小渋川には長さ約170メートルの橋が地上から60〜70メートルの高さに架けられる。環境や景観、何より静穏な暮らしを守れそうにない…。住民の不安や心配は切実だ

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JR東海は住民の声に十分応えてきたのか。工事用車両が通る道路の改良は後回しになった。要望が出ていた小渋川の橋の地中化も受け入れていない。上蔵(わぞ)地区では住民が心のよりどころにする福徳寺(重要文化財)の脇を工事車両が行き交うことになる

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電車が発車時刻を過ぎたり満員になったりして乗客を全員乗せずに発車する。それになぞらえ論議を尽くさずに実行に移すことを「見切り発車」という。国家的事業だからと先を急ぐあまりに村の誇りや幸せを置き去りにしてはいけない。

(2月11日)