図書館本

2015年2月22日のNHKスペシャル「腸内フローラ 解明!驚異の細菌パワー」の書籍化
テレビ番組より情報量が断然多い(放送での語られる文字数の制限により)。
基本的には Missing Microbes: How the Overuse of Antibiotics Is Fueling Our Modern Plagues
by Blaser, Martin J.を素材にしていると思われる。(TVでもマーチン氏を取材している)
邦訳は「失われてゆく、我々の内なる細菌」で出版されている。

個人的な事で恐縮だが、本書にリンクする腸内細菌(フローラ、バイオータ)の研究は
30年以上前に本書の中にも登場する光岡先生が嫌気性菌培養をまさにご自身で実験器具
まで作って創められたと記憶している(授業とラボ見学で直接伺った)。
そして無菌マウスを使った実験でいわゆる悪玉菌(C.パーフリンジェンス)と乳酸菌を
それぞれ移植されたマウスのガン発生率が優位に異なる事を示された。
また老化(エイジング)と腸内細菌の関連も、老人のうんちは臭いけど、赤ちゃんのうんちは
臭くないでしょう、という光岡先生の講義をいまだに記憶しているとこである。
そして、昨今の急激な腸内フローラ解析の進歩は次世代シークエンサーによるものである
ことを示し、世界中の人からの便の解析が急ピッチに行われていることを綴っている。

さて、本書ではテレビでは語り切れなかった腸内フローラと種々な疾病の医学研究の最新情報を
綴っている。また、現在多くの臨床治験が進んでいる便微生物移植法に関しても紹介している。

本書でも指摘するように海外では国家プロジェクトとしてすでに腸内フローラの包括的な研究が
進められているが、日本では個別のラボベース、あるいは企業レベルでのアプローチである。

もうひとつの臓器としての腸内フローラが人間の進化とも関連していること、抗生剤等の
影響(多用)によるフローラの多様性の減少が人類の未来にまで影響する可能性を本書は
示唆している。

やせる! 若返る! 病気を防ぐ! 腸内フローラ10の真実
NHKスペシャル取材班
主婦と生活社
2015-08-28


腸内細菌の話 (岩波新書 黄版 58)
光岡 知足
岩波書店
1978-09-20



授業の時に学生全員がこの本をいただきました。