本書の題を見た時最初の感想は

矢口高雄さん(釣りキチ三平の著者)の
ボクの先生は山と川
ボクの学校は山と川
両方とも矢口さんの子供時代から青春時代を綴った名作だと記憶している。

本書は肩書が職業猟師+西洋毛鉤釣り職人の牧さん(1977-)の人生の道程だろうか。

NZ留学、帰国、奥様の実家がある宮崎への移住。
メインは移住後の山と共存していくエッセイ。

フライタイヤー(毛鉤作成者)を生業として生活していた牧さんが、宮崎の地で
狩猟免許のわな猟、散弾銃や空気銃の免許を得て毛鉤の材料となる毛皮やカモの羽なども
自らが狩猟により得て、まさに起承転結の生活を創り出していく過程を綴っている。

その過程は決して遊び半分のサバイバル狩猟などというものではなく、有り難く山の恵みを「いただく」という
態度であり、農家のために、少しでも獣害を減らしてあげたいという共同体の一員としての姿がある。

フライフィッシング(西洋毛鉤釣り)という遊び、その背景にあるのは、魚が住む渓流、渓流を生む豊かな森と自然
であろう。ただ釣りが出来るだけなら釣り堀や管理釣り場で十分である。
フライフィッシングという遊びが未来も出来る様にするためには、その自然と真剣に向き合い、
森や河に存在する動植物に目を真剣に向けることが必要なのだと思う。

そして、渓流や森は、単に釣りだけの目的にあるのでは無いことも釣り人は認識して向き合うことが重要だと再認識した一冊。

釣りだけのために外来種を放流したり、他の渓流から魚を移動させる行為がいかに愚かな行為なのかを山と川は教えてくれているのだから。