備忘録 リニア


米、リニア事業化調査へ JR東海の技術導入を計画
年内にも着手、補助金34億円

2015/11/9付
日本経済新聞 夕刊


 【ワシントン=河浪武史】米政府は年内にも、ワシントンとメリーランド州ボルティモアを結ぶ超電導リニア鉄道の事業化調査に着手する。同路線は東海旅客鉄道(JR東海)のリニア技術を導入する計画で、日本政府も強く後押ししている。1兆円超とされる建設コストが壁となり実現時期などは未定だが、日米の大型インフラ協力の第一歩となる。

 来日中のアンソニー・フォックス運輸長官は8日、調査費などとしてメリーランド州に約2800万ドル(約34億円)の補助金を交付することを明らかにした。日本政府関係者によると、ワシントンとボルティモア間のリニア構想に絡んで連邦政府の予算が拠出されるのは初めてだ。資金はリニア導入による環境への影響や工学分析など計画策定にあてる。

 ワシントンとボルティモア間は現在の高速鉄道でも約40分かかるが、リニアを導入すれば15分に短縮できる。同路線を延伸して、ワシントンからニューヨーク、ボストンまでの「北東回廊」をリニア路線で結ぶのが最終的な構想だ。JR東海は国内で総額9兆円のリニア中央新幹線の建設事業を抱えるが、リニア輸出で部品量産などのコスト低減効果が見込める。

 インフラ輸出を成長戦略の一角に掲げる安倍晋三政権も、リニア技術の輸出を強く後押ししている。今年4月の日米首脳会談でも、成果文書の最上位に高速鉄道でのインフラ協力を盛り込んだ。日本政府とJR東海は、ダラスとヒューストン間でも従来型の高速新幹線の導入を目指している。

 リニア路線の本格的な事業化に向けた壁は資金調達だ。ワシントンとボルティモア間だけでも建設コストは1兆円を超えるとされ、日本側も国際協力銀行(JBIC)などを通じて資金支援する考えだ。米国では路線が競合する全米鉄道旅客公社(アムトラック)の経営再建も大きな課題となっており、政治的にも調整が必要になる。

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2015/11/17付

官民ファンド、米高速鉄道計画への出資を発表 49億円

2015/11/21 10:58

 インフラ輸出を支援する官民ファンド「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)」は21日、米テキサス州での民間主導の高速鉄道計画に出資すると正式発表した。同計画を進める民間会社への4千万ドル(約49億円)の出資を、石井啓一国土交通相が同日認可した。東海旅客鉄道(JR東海)が新幹線の導入をめざす案件の実現に向け、一歩前進した格好だ。

 マレーシア訪問中の安倍晋三首相は21日の講演で今回の出資に触れ、「高速で安全な日本の新幹線技術もどんどん使ってほしい」と述べた。国交省が主導して設立したJOINの出資は、建設前のルート選定や用地買収などに使われる。
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