図書館本 原著のkindle版は買いました。1100円

原題:Missing Microbes How the overuse of antibiotics is fueling our modern plagues

医学、医療に関連される方すべてに読んで欲しい一冊です。

「沈黙の春」(レイチェル・カーソン)そして「抗生物質の冬」なのかもしれないと。
多くの常識が覆るでしょう。

胃内のピロリ菌は胃癌の原因となることはノーベル賞を発見者が受賞したことからも多くの方が知っているだろう、でも果たしてピロリ菌は単なる悪者なのだろうか?

帝王切開で生まれた子供と自然分娩で生まれた子供の違いは?
子供の時期に短期間であれ抗生物質が投与された影響は?
生物の多様性が失われる時、自然も破壊されていくことを我々は知った。
そして、人に棲む細菌の多様性が失われ時、何が起こるのだろうか?

抗生物質やワクチンは多くの命を救った奇跡の薬剤である、しかし原題が示しているように抗生物質の過剰使用が導く人の未来(動物(家畜)も)は必ずしも明るくないことを本書はまさに実験と疫学的データでクリアーに示している。

肥満、若年性糖尿病、アレルギー、自閉症までもが常在細菌の攪乱により誘導されるとしたら?

備忘録メモ
マイクロバイオータ:細菌を含む微生物集団、微生物相 日本ではまだ細菌叢と訳す
マイクロバイオーム:ヒト体内の常在細菌とそれが発現する遺伝子群、および常在細菌とヒトの相互作用を含む広い概念
家畜(魚類を含む)への予防的抗生剤投与 成長促進効果あり
ピロリ菌による胃炎は善か悪か
ピロリ菌が胃食道逆流症に防御的に働いている 食道がんの発生を抑制
子供の胃中ピロリ菌が花粉症を予防している可能性
肥満、身長上昇と抗生物質の関係性 体重増加と脂肪蓄積
若年性糖尿病のリスク 帝王切開の子供、背の高い男の子、生後1年間の体重増加が大きい子 
腸内細菌の脳の初期発達への関与?
抗生物質が誘導する下痢、クリストリディウム・ディフィシル 死亡例
抗生物質耐性菌の出現と病院外での感染
1週間の抗生物質治療が耐性菌を3年以上持続 常在菌への長期影響

抗生物質後の時代(耐性だけでなく、生態系崩壊)
消毒薬(抗生物質ではない)の使い過ぎも皮膚の常在菌に影響

フランス 抗生物質は自動的に処方されるべきでないキャンペーン
2013年FDA 成長即品目的の抗生物質投与の家畜への投与禁止 (治療目的は除く)
製薬会社 広域抗生物質の開発メイン 狭域抗生物質の開発のハードル
帝王切開の場合の子供への膣内ガーゼ法(母親の細菌叢を赤ん坊に)
糞便移植によるクリストリディウム・ディフィシル再発患者に対する劇的効果


目次

第1章 現代の疫病
第2章 微生物の惑星
第3章 ヒトのマイクロバイオーム
第4章 病原体の出現
第5章 驚異の薬
第6章 抗生物質の過剰使用
第7章 現代の農夫たち
第8章 母と子
第9章 忘れられた世界
第10章 胸焼け
第11章 呼吸困難
第12章 より高く
第13章 ……そしてより太く
第14章 現代の疫病を再考する
第15章 抗生物質の冬
第16章 解決策
エピローグ

原注
訳者あとがき
索引

失われてゆく、我々の内なる細菌
マーティン・J・ブレイザー
みすず書房
2015-07-02