狩猟の本やコミックが沢山出版されている昨今、その背景の一つには山里の耕作地を荒らす獣たち、シカによる樹木の被害等があるのだろう。
もちろん、サバイバル狩猟(登山)などと言って面白半分でテキストを綴る輩もいるのだが。

本書は、山に生き、山に生かされている人々を丁寧に取材し、写真とテキストに収めている。
これから真剣に狩猟をしたいと考えている方、山の恵みに興味のある方には最適な一冊だと言える。

田中氏の著作で個人的に最も優れていると感じる一冊は「マタギ 矛盾なき労働と食文化」である。
あえて学術的でないと吐露しながら、丁寧に狩人(マタギ)の技能、しきたり等を記録している。
もちろん他の著作でも狩猟に関する興味ある話題を多く提供してくれている。
そんな田中氏のこれまでの途中集大成的な一冊であることが目次からも分かる。

はじめに――猟師たちと見てきた日本
序 章 おカネになる獲物が山から下りてきた
第1章 食べる ―― 猟師の日常料理
第2章  皮・角・牙を利用する ―― 手づくりの愉しみ
第3章  獲る ―― 獲物との駆け引きの知恵
第4章 売る ―― おカネに変える技

多くのカラー写真を挿入し、ビジュアル的にも楽しい。
そして単なる狩猟と獲物の活用法で終わらないのが田中氏らしいのだ。それは読んでのお楽しみ。

本書を読み終えて(見終えて)確信したのは、本書に登場する人々こそ日本でサバイバル出来るのだと。
なぜなら、化石燃料が無くても、米が無くても、山からの恵みの「頂き方」を先祖代々受け継いで、衣食住をほぼ貨幣の存在無しに自分たちで循環させることが出来るのだから。




目次
はじめに――猟師たちと見てきた日本
 登場する猟師とその仲間たち

●序 章 おカネになる獲物が山から下りてきた

●第1章 食べる ―― 猟師の日常料理
◆イノシシ
煮る・・マーマレード煮/紅茶煮/角煮/煮込み/簡単チャーシュー
揚げる・・ロースカツ
 <あると便利な料理用品
燻製にする・・簡単スモーク
漬ける・・味噌漬け/朴葉味噌焼
挽肉料理・・餃子/ウインナー
蒸す・・簡単蒸しイノシシ
焼く・・バラ肉丼/スペアリブ
骨で出汁を取る・・骨鍋・骨スープ/シシ粥
内臓料理・・茹でレバー・茹でハツ/レバーペースト
◆シカ
炙る・・フライパンでタタキ/鍋でタタキ
煮る・・ハヤシライス/ラグーソースパスタ
挽肉料理・・ハンバーグ/シカケバブ/餃子
焼く・・焼肉
揚げる・・シカカツ
漬ける・・醤油漬け/塩こうじ漬けの冷しゃぶサラダ
内臓料理・・レバーペースト/茹でハツ

●第2章  皮・角・牙を利用する ―― 手づくりの愉しみ
なめす人がいないなら自分でやればいい
・・高知県四万十町・四万十革部
大きなものより小さいほうがいい
・・石川県白山市・クラフト工房「CRAFTWORKS ER」

●第3章  獲る ―― 獲物との駆け引きの知恵
◆ワナ猟
くくりワナ猟編・・ねじりバネ式/押しバネ式/引きバネ式/バネなし式/自家製くくりワナ/くくりワナの止め刺し
箱ワナ猟編・・箱ワナ/手作りの箱ワナ/箱ワナの止め刺し/イノシシの解体
◆銃猟・・散弾銃/ライフル銃/空気銃/銃器一覧
 <狩猟をするための資格
楽しいぜ! 狩猟アイテムの世界・・ナイフ/長靴/冷蔵庫/軽トラ/車載ウインチ/ミニクレーン/無線/猟犬

●第4章 売る ―― おカネに変える技
ブロック肉か、スライス肉か・・高知県安芸市・長野博光さん
シカ肉はタオルでうまくなる・・大分県佐伯市・RYUO
イノシシは2日間吊るす・・石川県小松市・狐里庵
施設は自分たちで作ればいい・・高知県大豊町・猪シカ工房おおとよ
仕留めてから2時間以内に冷凍する・・山梨県早川町・早川町ジビエ処理加工施設
猟師の腕次第で買い取り値段を変える・・福岡県みやこ町・農産物直売所「よってこ四季犀館」

おわりに――可能性は無限大