最近対談本が多い養老先生(1937-)ですが、この本は良いです。
2014年のニコルさん(1940−)のアファンの森、および養老先生の箱根のバカの壁ハウスでの対談を編集されている。

おそらく聞き手の青山さん(サイエンスライターの第一人者)の広範の知識と経験が生かされているのだろう。
養老さんにしてもニコルさんにしても、これまでのブレの無い思想哲学を語っている。

本書を通じて語られるのは、脳化社会(都市化)における身体性の欠如がもたらす日本の弱体化だろう。

備忘録的メモ
滑川(鎌倉市、養老さんが子供ころ遊んだ)に生態系をまったく考えないでコイやフナを放した鎌倉市役所
日本の問題だらけの漁業 漁業権の補償費だけ払って、魚を捕らない方がよい。マグロ
限界集落問題、老人がいるから若者が来ない。
家畜化している都会 弱い感覚
ほったらかしの重要性 子供と自然
「意識」の問題 コントロール出来ない意識 科学が意識の問題をタブー扱い 意識は科学の大前提のはず
「同じ」という意識
「いただきます」「もったいない」「ごちそうさま」日本語の美しさ
一神教:一番上に神 八百万の神:一番したの階層が神
説明されればわかるのか? 説明したら陣痛がわかる?男子学生 わからないということを留保する必要性
自然から離れないでくださいbyニコルさん
自然に触れて欲しいby養老さん

若い人を元気にするのに一番いいのは、年寄りが早く死ぬこと。年寄りがいなくなりゃ若い人が動かざるを得ない。若い人って責任を持たせた瞬間に急激に伸びますからね。by養老さん

今の日本人、都合の悪いことは、見ない、聞かない、言わない、そして考えない。
見ざる、聞かざる、言わざる、考えざる。
今の人の常識に一番欠けているのは、「危ないのは自分だ」ということ。だから安全に対してこんなにうるさい。
天下無敵の本当の意味by内田樹 天下に敵がない、全員を見方にしちゃう、それが武道の理想

日本の森と川と海は本当に酷い状態。それを何とかしたいby 養老、ニコル


目次 山と渓谷社より
<目次>
【1章 森と川と海のこと】
荒れた森を再生する/日本の杉は苦しがっている/馬に木を運ばせる/木の力、森の力/森と川、そして海のつながり/川は「流域」で考えよう

【2章 食べること、住まうこと】
田舎の力/都会の罠/虫は貴重なタンパク源だった/何でも食べられるのは「貴族」/木を生かす適材適所/原発事故のあとに残された難問/人間関係を保険で補償する時代/経済成長とはエネルギーを使うこと

【3章 子どもたちと教育のこと】
「ほったらかし」が一番/二人の子ども時代/母親の世界から飛び出せ/ゲームより実体験/自然が足りないと世界は半分になる/新しいエリートをつくる/体験を通すと生きた知識が身に付く/森で授業を/小さいときに触れるべきもの

【4章 虫のこと、動物のこと】
生き物の分類は分ける人によって変わる/ゾウムシは中央構造線を知っている?/オスは時々いればいい/ハチに刺されて死ぬのはなぜか/クモに名前をつける/いなくなった赤とんぼ/生き物は複雑なシステム/キリンの首はなぜ長い/熊との付き合い方

【5章 五感と意識のこと】
ハエも用心するクサヤのにおい/顔色をうかがうための進化/意識はコントロールできない/人が失った絶対音感/山の声が聞こえる/銃を撃つ前に逃げるカモ/夢と意識/時間と空間/「意識の時代」と「身体の時代」

【6章 聞くこと、話すこと】
英語を強制されたトラウマ/気持ちと結びつく日本語/訓読みは難しい/主語の有無は文化の違い/自我の目覚めが遅い日本人/日本語と感覚/片言の中国語/「暗いところ」がなくなった/言葉がなくなると存在もなくなる

【7章 これからの日本のこと】
子供も、大人も外で遊べ/若者に責任を持たせよ/日本人に覚悟はあるか/言い訳の多い日本人/もう一つ先を考える/人間は「状況の産物」である/日本人よ、自分を取り戻せ