リニア、鍋立山のことなど - 記事の裏だって伝えたい


ジャーナリストの樫田さんのブログより。 一番下に紹介する樫田さんの近著も是非読んでみてください。

以下
●鍋立山のこと

 昨日のブログで、土木技術者の方が書いてくれたトンネルの難工事の事例を紹介しました。
 そのなかで、

・北越急行ほくほく線鍋立山トンネル 長さ9.12km 工期22年(1973.12〜1995.11)

 がありますが、ここに出てくる「鍋立山」については、3年ほど前、このブログでも紹介したことがあります。こちらです。

 ここでは、鍋立山に関する部分だけを切り出してみます。

ーーここからーー

 この新潟県においては、かつて、あの「青函トンネル」や「英仏海峡トンネル」をも上回る「世界一の難工事」と言われた山岳トンネル工事がありました。

 それは「鍋立山トンネル」

 現在の北越急行ほくほく線の「まつだい駅」と「ほくほく大島駅」とを結ぶ長さ約9キロのトンネルです。

 鍋立山周辺は、日本有数の地すべり地帯としても知られているのですが、ここで工事が始まったのは1973年。
 そして、貫通したのが、95年。

 つまり、22年間もかかっているのです。
 驚くのは、途中の650メートルだけにその半分の11年もかかっていることです。

 なぜか?

 天然ガスや石油の滲出が絶えず、また、山の地圧が掘削機を押し戻す(!)という想定外の事態が続出したためです。

 wikipedia にはこう書かれています。


 掘り進むごとに地圧は強くなり、壁面を仮に支える支保工はねじ曲げられ、切羽(掘削面)からの押し出しが激しくなり、ついには厚さ90cmのコンクリート壁が破壊されるという有様であった。かくて、1988年3月にはNATMによる掘削の断念を余儀なくされる。
 替わって1989年1月には先進導坑掘削のため、3,500tもの推力を持つトンネルボーリングマシン (TBM) が導入されたが、65mほど進んだところで泥火山による水とメタンガスと硬い岩石が混ざったヘドロ状の土でカッターの回転が止まり、前進も後退も出来なくなってしまう。ついには地圧に負けて押しつぶされたあげく掘削開始地点より35m手前まで押し戻されてしまった。


 これは、事業者にとっては本当に「想定外」続きだったのでしょう。

 と、ここで話をリニア中央新幹線に振ります。というのは、リニアはその想定ルートの86%もが地下トンネルや山岳トンネルで占められるからです。

 特に、南アルプスに関しては、初のトンネル掘削ということもあり、地質学の専門家たちは「掘るべきではない」と警告を発しています。

(中略)

 果たして、南アルプスにトンネルを開けることは可能なのか?

 私はJR東海に問い合わせてみました。

 回答は「南アルプスの長大トンネルについては、水平ボーリングを実施し、地質等の状況と確立されている技術を踏まえ、トンネル掘削は可能と判断しました」というものです。

ーーここまでーー

 ここで捕捉をすると、JR東海が行った水平ボーリングとは、2008年、長野県大鹿村で実施されたものです。
 それがどういう水平ボーリングかというと、

★直径10センチ x 長さ1キロ

 つまり、全長25キロにもなる南アルプス部分のトンネルの、水平距離の25分の1だけの調査で「掘削は可能」としたということです。残り24キロは「確立されている技術」で何とかなるということです。


●トンネル工事の出水とは人が流されること

 これも、2014年10月27日のブログからの引用ですが、準ゼネコンのベテラン社員は、いかにリニア建設の工事を断ろうかと考えていました。
 難工事で会社の採算が採れないこと、異常出水が予想されることがその理由でした。

 以下、引用します。

ーーここからーー

「わが社では躊躇しています。というか、リニア計画への参入には後ろ向きです」

 なぜ?

「弊社の採算が取れるかが怪しいから。おそらく受注したら、1Kmあたり数十億円や数百音円での枠での受注となるでしょう。つまり、弊社がその額面以内で工事を終えられるかです。これまでの整備新幹線は、国と自治体のお金で建設されたから、工費がオーバーになっても、それをカバーしてもらえた。だが、今回は違う。全額、2兆円以上の赤字を抱えるJR東海の自己事業です。
 また、南アルプスは難工事になるのは間違いない。そうなると工費はかさむ。さらに、何が難工事かというと、異常出水が必ずあること。異常出水ってすごいですよ。だって、トンネルのなかで人が流されるんだから。それで、もし社員が一人でも二人でも死んだなんてなったら、シャレになりません。JR東海は当然弊社の参入を見込んでいるけど、今、どうやってそれを断ろうかと…」

 また、その異常出水や水枯れは必ず起こるわけですが、評価書のなかで、JR東海は「事後調査をする」と言っています。Bさんは、「いったん受注すれば、事後にも関わることになる」と怖れます。

「もし異常出水した場合は、その水を元の水源に戻すなどの工事が必要になります。そして、いったん地上に出てきた地下水はph(ペーハー)も変わるし、変質もする。それを元々の水質に戻すには、莫大な資金がいる処理施設が必要。その建設や維持も、JR東海と契約を交わす1キロあたりいくらの受注額のなかでやりくりしなければならない。腰が引けますよ」

 自分の会社だけではなく、ゼネコンにしても、進んで参入する会社はそれほどないはずだとBさんは予測します。もちろん、個人的予測ですが。

 おそらく、それでも受注した場合でも、公的事業では当たり前ですが、下請け、孫請け、ひ孫受けと次々と丸投げするのでしょう。
 そうなると、従業員の労働環境や待遇はどうなるのか。
 たとえば、大きな建設現場では、孫請けが労災事故を起こしたら、それはその親会社の責任になるので、労災隠しも必死かつ必至になる。
 でも今の時代、どんな仕事でもほしいという下請けの建設業者はたくさんいるから、労災隠しにも甘んじる…。リニアではどうなるのだろう。心配はつきません。

ーーここまでーー

 JR東海の自己資金だけでやろうとしたら、難工事による工費オーバーが生じた場合、やはり、しわ寄せは孫請けやひ孫受けなど下請け企業の従業員にいくのではないかと、ちょっと心配になります。
 それでも、とにかく、来月の、いや明日の仕事が欲しいと思う中小事業者は傘下に入るんだろうなあ。

 ゼネコンとJR東海とが、受注額に関してどういう契約書を締結するのか、とても関心があります。
 いや、それ以前に、ゼネコンがこの南アルプスのトンネル工事にどれほど前向きなのか、そうでないのかが知りたいところですが、なかなか、その情報のとっかかりが見つかりません。











圧力で出版出来なかった。出版直前で圧力がかかったようです。

樫田 秀樹
東海教育研究所
2014-02-28