リニアとNHK - 記事の裏だって伝えたい


ジャーナリストの樫田さんの記事

リニアとNHK

 先日、電子版記事の「週プレNEWS」に、「リニア報道に圧力が? メディアは不都合な真実をなぜ伝えられないのか!」との記事を出したところ、なかなかの好評をいただいております。

 記事はこちらです。 

 ただし、長文にならないため、下書きの半分くらいに編集されての掲載でした。

 ここでは、「リニアとNHK」との関係についてもう少し詳しく書いてみます。

 私の知人に週刊誌Sの編集者がいますが、彼が、一昨年だか、NHKの幹部クラスの人と呑みに行ったとき、その幹部が「ウチではリニアの問題は取り上げません」と語ったそうです。確かに、NHKは今まで真正面からリニアの問題点を報道したことがありません。

 先日の1月5日に放映されたNHKの「ろーかる直送便 ナビゲーション リニアインパクト〜開業までの課題は」でも、ほとんどがリニアに期待する司会者とゲストの発言ばかりで、課題にしても、JR東海の柘植康英社長の「(工事中の)運行車両の騒音・振動などの問題もあれば、水の流れに影響する問題もあれば、いろいろな環境への問題がある。それに対して、極力回避して影響を及ぼさないようにする」とのコメントで締めくくられました。各地で活動する市民団体のコメントなどありません。

 なぜ、NHKはリニアの問題点を報道しないのか?

 これは電子版記事にも書きましたが、2013年8月29日のリニア走行実験再開時には、ほとんどのマスコミが取材に殺到していました。ところが、予期せず現れた、リニアに反対する市民団体の抗議活動に驚いた一部の記者たちが取材を始めました。
 このとき、記者の何人かに「なぜリニアは報道されないのですか? JR東海がスポンサーだと難しいんですか」と私が尋ねたなかにはNHKの記者もいたのです。
 この抗議活動は地方紙と赤旗くらいしか報道しませんでした。
 JR東海の広告が収入源であるマスコミの報道はありませんでした。

 しかし、NHKは広告料をもらっているわけではないので、スポンサー云々とは関係のない話です。

 そのNHKの記者は熱意がありました。だがこう言ったのですーー「報道されるかどうかは、すべて上の判断です」


●NHKの会長人事

 リニア問題に関わる市民団体は、NHKの会長人事が、安倍首相や、そのブレーンである葛西敬之・JR東海名誉会長に握られているであろうことを(断言はできませんが)既に知っています。

 NHKの人事権を握るのはNHK経営委員会。その11人の委員を任命するのは内閣総理大臣(国会での承認が必要)。

 この人事に深くかかわっているとされるのが、安倍首相の経済ブレーンである財界人の集まり「四季の会」で、その幹事役を務めるのが葛西名誉会長です。

 2007年6月の第一次安倍内閣では、NHK経営委員長には安倍首相の意向で富士フイルムの古森重隆社長(当時)が選ばれたと言われています。
 その古森経営委員長がNHK会長に任命したのが、アサヒビール(現・アサヒグループホールディングス)の相談役の福地茂雄氏。両者とも四季の会のメンバーです。

 そして、2011年1月、古森氏の推薦を受け、福地会長の後任として松本正之氏がNHK会長に就任します。松本氏は葛西名誉会長の元部下でJR東海の元副会長。

 ところが、松本氏はその経営方針を巡り葛西氏と対立し、2014年1月、1期限りで退任しました。そして新会長の籾井勝人氏の就任にも四季の会の意向が働いたと言われています。

 これだけの事実でも、NHKはリニア計画の問題点を報道しないのだろうなと推測できます。

 リニアという超巨大事業は、その問題点が、公共放送で一度も「真正面から」指摘されることなく、国民的議論を喚起することもなく、ただ、その推進が看過されているのです。

 私はリニアに賛成だ、反対だとは言いません。ただ、賛成、反対をひっくるめた議論が必要だと考えます。
 だから、今の国土交通省国とJR東海の推進の仕方には問題があるし、やはり、報道機関がその役割を果たさずにいることはおかしいと考えます。

 電子版記事では、市民団体「リニア新幹線を考える東京・神奈川連絡会」の天野捷一さんが、NHKのクローズアップ現代の取材を10時間近く受けながら、放映前日にNHKから「申し訳ありません。天野さんや、天野さんが紹介してくれた市民の声は放映できなくなりました」との連絡を受けたことを書きました。

 間違いなく「上」からの圧力ですが、その上がどこの部署なのかは知る由もありません。

 ただ天野さんはこう述べていますーー「受信料不払いの理由が出来た気持ちです」