感染症にご興味ある方は読んでおいて損はないです。

かなり詰め込み過ぎ感はありますが、これは著者的にはもっとページ数を増やして説明したかったと想像する。
ただ、若干、雑に思える説明も散見される(エボラの症状、結核での堀辰雄の身辺の描写)。

最も本書で重要な点は、感染症は終わることなく、常に人類に対する脅威であること。
そして正しい知識で予防、治療、防御対策を行う事の重要性である。
歴史が実は感染症という文脈で語る事も出来ることは、他の著作等でも明らかであり、軍事力だけで戦争が完結するわけではない事も示されている。さらに今後危惧されるのは感染症病原体を使用するバイオテロの恐怖もある。
有名人と感染症という関係性も読む分には興味深い(坂井泉水、夏目雅子)

備忘録的メモ
SFTS(重症熱性血小板減少症候群、日本でのダニよる感染)には触れていない。
約5400種のウイルス、6800種の細菌が発見されている
ハンセン病はワクチンによる根絶が期待されている?
耐性菌問題(人、畜産、養殖)下水での耐性獲得の可能性
梅毒の末期患者へのマラリア感染で病原体を死滅させる(1927年ノーベル賞)
開発やダム等による感染症の拡大
「日本住血吸虫」が水田稲作とともに弥生時代に持ち込まれ? 
人に病気を起こす病原体 1415種(細菌538、ウイルス217、菌類307、原虫66、寄生虫278)
1911年のコレラ 総死者数37万人 コレラ一揆
第2次世界大戦 日本兵 マラリアでの死亡 ルソン島5万人、インパール作戦4万人、ガダルカナルで1万5千人
17−18世紀 欧米人が意図的に先住民にハシカの衣服を使う「細菌戦」
ピロリ菌解析による人類の起源研究
寄生虫による脳の支配 カマドウマにハリガネムシ トキソプラズマと異常行動
ハシカの輸出国ニッポン ワクチンにより死亡者数激減
風疹問題 CRS(先天性風疹症候群、抗体陰性妊婦の感染、先天性障害)

出版社のHPより目次

まえがき──「幸運な先祖」の子孫たち 

序 章 エボラ出血熱とデング熱――突発的流行の衝撃 

1.最強の感染症=エボラ出血熱との新たな戦い

死亡率は九〇パーセント/二〇一四年の感染爆発/死者五〇〇〇
人に/感染は欧米に飛び火/WHOへの批判/広がる混乱/七〇
年代にはじまった流行/新たな変異ウイルス/感染源はコウモリ
か/森林破壊が引き出したウイルス/空気感染の可能性/希望の

2.都心から流行がはじまったデング熱

原因はヒトスジシマカ/日本のデング熱/日本から輸出されたデ
ングウイルス/世界に広がる流行/起源不明の謎のウイルス/異
種を圧倒するヒトスジシマカ/人が流行に手を貸した

【第一部】二〇万年の地球環境史と感染症

第一章 人類と病気の果てしない軍拡競争史

人類の移動と病原体/人と微生物の共進化/ウイルスの重要な働
き/微生物の巨大ファミリー/微生物と宿主の永遠の戦い/「赤
の女王」効果/勢いを増す耐性菌/抗生物質乱用への警告/野放
しの飼料の薬漬け/下水で耐性を獲得/感染症と人類進化の複雑
な関係/人体の防御反応/自然災害としての感染症

第二章 環境変化が招いた感染症 

定住化による感染症の定着/マラリアの起源/世界に拡大するマ
ラリア/日本の「おこり」/農業が広げた感染症/難しい上下水
道の分離/動物から人に乗り移った病気/時代を特徴づける大流
行/産業革命がもたらしたコレラと結核/日本のコレラ流行/感
染症を蔓延させた戦争/環境の悪化と感染症/熱帯林で何が起き
たのか

第三章 人類の移動と病気の拡散 

病気も交換した東西交流/史上最悪のペスト流行/農業革命が引
き金に/大流行の置きみやげ/第二、第三波の襲来/起源は中国
雲南省/ハンセン病の猛威/新大陸の悲劇/次々に持ち込まれる
病気/先住民の復讐/交通の発達がもたらしたSARS/ニュー
ヨークにアフリカの感染症/感染症の新たな脅威

【第二部】 人類と共存するウイルスと細菌

第四章 ピロリ菌は敵か味方か――胃ガンの原因をめぐって 

日本人最大の感染症/ピロリ菌の正体/おヘソの住人たち/共存
共栄してきた常在菌/ピロリ菌の巧みな生存術/菌の南北問題/
ピロリ菌が語る人類の移動/感染症かアレルギーか/急増するア
レルギー/胃ガンになった有名人

第五章 寄生虫が人を操る?――猫とトキソプラズマ原虫 

もしも、あなたが猫から寄生虫をうつされると──/原虫が脳を
乗っ取った/妊婦の感染に注意/ドーパミンで性格が変わる/増
える交通事故と自殺/寄生虫による脳の支配/人間の進化に関わ
る猫/ペスト対策で活躍した猫/魔性の動物/世界の猫好き

第六章 性交渉とウイルスの関係――セックスがガンの原因になる? 

セックスはタバコなみに危険/働き盛りに患者が集中/オーラル
セックスにご用心/さまざまなガンを引き起こすHPV/ウサギ
からガンウイルス/ヒトパピローマ・ウイルスの発見/HPVの
正体/霊長類から人類へ/ワクチンの接種はじまる/ワクチン接
種の反対運動/頸ガンにかかった有名人

第七章 八種類あるヘルペスウイルス――感染者は世界で一億人

ありふれたウイルス/格闘技ヘルペス/急増する性器ヘルペス/
性の行きすぎた解放/感染力が強い水痘/高齢化で増える帯状疱
疹/エイズ感染者に多いカポジ肉腫/疲労とヘルペスウイルスの
関係/古代にさかのぼる歴史/自然界に広く分布するヘルペスウ
イルス/人類の移動に便乗/日本はワクチン行政の後進国/ヘル
ペスにかかった有名人

第八章 世界で増殖するインフルエンザ―― 過密社会に適応したウイルス 

南極のペンギンから鳥インフルエンザ/豚が重要な仲立ち/複雑
な亜型に分化/「H5N1亜型」の発生/四〇万人を殺した豚イ
ンフルエンザ/中国から現れる新手のウイルス/自然界のウイル
ス汚染/「インフルエンザ」の由来/一九世紀以降の大流行/ス
ペインかぜのゼロ号患者/世界を巻き込む大流行/大戦終結を早
めたインフルエンザ/日本のインフルエンザ/死者は八〇〇〇万
人にも/スペインかぜの正体/環境破壊が招いた集団感染/くし
ゃみで飛び散るウイルス/原因は畜産革命に/インフルエンザに
倒れた有名人

第九章 エイズ感染は一〇〇年前から――増えつづける日本での患者数 

突如現れた奇妙な病気/流行のはじまり/ウガンダで集団発生/
ウイルス発見の先陣争い/世界へ広がるエイズ/起源はアフリカ
の霊長類/先祖はマダガスカル生まれ/感染原因はチンパンジー
狩り?/なぜ感染爆発を起こしたのか/多様なHIVファミリー
/宿主を変えたウイルスは凶暴/HIVに感染しない耐性人間/
エイズ耐性をもたらした感染症/エイズの現状/これからの問題
/エイズで死んだ有名人

【第三部】日本列島史と感染症の現状

第十章 ハシカを侮る後進国・日本 

日本はハシカの輸出国?/危機意識の低い日本/MMRワクチン
騒動/世界の発病者数/多様なウイルスのファミリー/自然界の
モービリウイルス/牛の感染症から変異/世界のハシカの歴史/
戦乱が後押しするハシカの流行/日本のハシカの歴史/将軍徳川
綱吉の最期

第十一章 風疹の流行を止められない日本 

再流行が妊娠世代を直撃/日本は風疹流行ワースト3/先天性風疹
症候群の影響/六〇年代に世界的流行/沖縄に広がったCRS/
鎌倉時代からあった風疹/風疹ウイルスの遺伝子/ワクチンをめ
ぐる混乱/他の先進国とのワクチンギャップ/予防接種の空白期
/映画化された風疹

第十二章 縄文人が持ち込んだ成人T細胞白血病 

偏って分布するHIVの兄弟分/風土病扱いの病気/発症の仕組
み/一〇〇万人を超える感染者/アフリカのサルが起源/サルか
ら人へ/人類の移動とウイルス/縄文人が持ち込んだウイルス/
アイヌ民族と琉球人の共通点/世界の偏った分布/成人T細胞白
血病にかかった有名人

第十三章 弥生人が持ち込んだ結核 

若者を蝕んだ結核/相つぐ集団発生/結核の起源/骨に刻まれた
証拠/弥生時代以後のカリエス/産業革命と結核の大流行/ジャ
ガイモ飢饉と結核/女工や軍人の間で感染拡大/抗生物質の劇的
効果/発病者の割合とBCG接種/多剤耐性結核菌との戦い/歴
史を変えた結核/結核とサナトリウム文学/結核にかかった有名
人/海外の有名人と結核/結核と音楽

終 章 今後、感染症との激戦が予想される地域は? 

感染症の巣窟になりうる中国/相つぐ食品スキャンダル/アフリ
カ開発が招く感染症/熱帯林に潜む新たなウイルス/実験動物輸
入の脅威/マールブルグ出血熱の教訓/アフリカのサル起源の病
気/次々と出現する新興感染症/病気のない世界/膨張する感染
症の温床/世界の高齢化と感染症

あとがき──病気の環境史への挑戦 

主要な参考文献