(教えて!リニア:4)地震や火災の時の安全性は?:朝日新聞デジタル



 リニア中央新幹線は、超電導磁石で浮き、時速500キロで走るという世界初の列車だ。品川(東京)―名古屋間のトンネルは全長の約86%に当たる247キロに及び、都市部ではほとんど地下40メートル超の大深度を走る。それだけに住民説明会では安全性に対する不安の声が上がる。

 3日、名古屋市であった説明会。安全性を問われたJR東海の宮川武・環境保全事務所(愛知)所長は「リニアは脱線しない構造で、地震に強いのが特徴です」と話した。

 リニアが走るのは、ガイドウェイというU字形の溝の中。浮上するので従来の列車のような車輪の脱線はない。さらに車両両脇と左右の側壁の間で磁力が「見えないバネ」となり、地震で揺れても車体は側壁に接触せず、中心にとどまるとする。地震の初期微動を検知し、大きな揺れが来る前にブレーキをかける新幹線のシステムを採用する予定。時速500キロでの緊急停車には、停止まで約90秒。約6キロかかるという

 ルート上に、長さ20キロを超すトンネルは4本。活断層も横切る。南アルプスを貫くため、山肌から1400メートル下を走る場所もある。

 JR東海は、活断層と交差する部分のトンネルは、周囲に薬剤を注入して岩盤を固めたり、補強鋼材を入れたりするほか、ボルトを多く打ち込むなどの方法で補強を図るとしている。また、「東日本大震災でも深刻な被害を受けていない」として、阪神大震災後に見直された耐震基準に従って建設していく方針だ。

 事故時の避難には、都市部では平均で約5キロごとに地上へ出る非常口を設ける。エレベーターが付く予定。山岳部では山腹へ出る横穴の避難トンネルなどをおよそ4キロごとに設ける。岐阜県瑞浪市付近は非常口の間隔が最も離れていて、約8キロあるという。

 トンネル内で列車火災が発生したら?

 JR東海は「不燃性・難燃性の素材を使うため、列車火災が起きる可能性はまずない」。万が一発生した時は、次の駅かトンネルの外まで走行して停車する計画。都市部のトンネルには、「床下」を設けて避難通路にするという。

 リニアの運行は中央指令所から遠隔操作する。運転士がいない列車が世界最高速で走行するが、JR東海は「自動運転システムの実用例は多数あり、問題ない」と強調した。

 仮に全電源が断たれたらどうなるのか。

 JR東海は「そもそも浮上に電力供給は必要なく、そのまま車両は浮き続ける。バックアップブレーキなどで減速して低速になれば、自動的にタイヤ走行に移る」としている。

 9月には御嶽山(おんたけさん)で戦後最悪の噴火災害が起きた。JR東海の柘植康英(こうえい)社長は10月8日の記者会見で、「御嶽山はリニアのルートから40キロ、富士山は30キロ。運行に支障はないと考える」と述べた。降灰被害が予想される場合は運転を見合わせるという。

 (斉藤太郎)