リニア中央新幹線着工認可 安全対策、立ち退き…「説明不足」住民不信 | カナロコ


問題だらけのリニア 

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 リニア中央新幹線の着工が17日に認可されたことで、巨大プロジェクトが2027年の開業に向けて本格的に動きだす。しかし、中間駅などが設置される相模原市内の地元からは、安全対策や立ち退き計画などの説明不足から、JR東海へ怒りや不信が膨れ上がっている。新駅を含めた新たなまちづくりを期待する市や商業者も、不安解消に気を引き締める。

 「地下水や残土処理、電磁波など安全性が見えないままの見切り発車。理解できる説明はなく、無責任」。リニア計画に反対の市民グループ「リニア新幹線を考える相模原連絡会」の浅賀きみ江代表(64)は「認可されても問題がなくなるわけではない」と、今後も問題点を訴えていく姿勢を示した。

 中間駅が設置される予定の橋本駅南口(同市緑区橋本)の県立相原高校の正門近くで、文房具店を営む亀山啓子さん(60)も説明不足を指摘する。「お店の立ち退きがあるのかなどの情報が入ってこない。分からないから何とも言えない」

 同校の移転問題に取り組んできた市民グループ「教育と緑ある橋本の町づくりを考える会」の安藤弘明事務局長(62)は「覚悟をしていたが、残念」と落胆。「災害時の避難場所として緑が残せるか住民も不安だし、リニアの問題点を訴えていく」と気を引き締める。

 不安な状況にあるのは、車両基地予定地(同市緑区鳥屋)も同様。昨年9月に公表された車両基地計画で、「立ち退き」が濃厚な地元住民の金山次男さん(65)は「移転や補償がどうなるかなど当事者に何の説明もない。生活設計が立たない」と、表情を曇らせる。

 立ち退き世帯が最も多くなるとみられる鳥屋地区の谷戸自治会の奈良信自治会長(62)は「車両基地で地域が分断されれば、自治会運営が成り立たなくなるのでは」と危機感を募らせる。地域の自治会未加入世帯も含めたアンケートで、約7割が基地設置に「反対」なのが分かった。

 こうした状況を市も把握している。リニア担当者は「移転など生活にかかる部分の不安を早く解消したい」と、JR東海に説明を求めていく考えだ。その上で着工認可の節目を「27年のリニア開業に合わせて進めているまちづくりに弾みがつく」としている。

 市商店連合会の浦上裕史理事長(65)は「リニアという黒船が来るのだから、地元の商店街は口を開けて待っているだけではいけない」と積極的なPRなどを口にする。それには危機感もある。「JR東海は、まちづくりを進めるだろう。存在感をアピールしなければ地元商店は衰退し、JRに乗っ取られてしまう」

◆住環境の悪化懸念川崎

 「市民に具体的なメリットがなく、迷惑だけを被る事業。つくるべきではない」

 川崎市周辺の沿線住民らでつくる「リニア新幹線を考える東京・神奈川連絡会」の矢沢美也共同代表は、国土交通省の着工認可に抗議し、あらためて計画の撤回を求めた。

 同市内では、4区の約16キロにわたり地下40メートル以上の大深度トンネルを通し、5カ所の非常口や保守用車留置施設などの整備が計画されている。市内だけで10トンダンプ95万台分(約407万立方メートル)ともされる建設残土が発生する見込みだ。

 市役所で会見した矢沢共同代表は、着工後の住環境悪化を懸念。工事中の騒音や地下水源への影響に加え、「十数年にわたって工事車両が市街地などを行き来すれば、排ガスの影響で市全体の大気環境が汚染される」などと指摘した。

【神奈川新聞】