悪夢の超特急 リニア中央新幹線 樫田秀樹 旬報社 2014

某大学系出版社から出版間際に没にされた書籍。
おそらく自主規制という文脈で理解出来るでしょう。


さて、本書は樫田さん(1959-)が長期にわたり自分の足で取材した内容が書かれている。橋山氏の「リニア新幹線 巨大プロジェクトの「真実」 (集英社新書)」が俯瞰的あるいは鳥瞰的な立場で書かれているのに対して本書はまさに地を這い回ってリニア新幹線構想の問題点をあぶり出している。

元国鉄技術者の告白(消費電力問題等)、電磁波問題を追い続けている市民団体、国家プロジェクトの言葉をちらつかされて土地を売ってしまった地域住民。
1999年、リニア推進団体も反対団体もリニアは実現しないと思った、そして樫田氏も取材を止めたと綴っている。しかし、2007年JR東海がリニアを自費建設すると発表。そこからまた利権が動きだす。
是非ともリニアが想定されている地域の皆さんには読んで欲しい。もちろん、飲み水が烏奪われる静岡県大井川下流域の皆さんも。

備忘録メモ
国交省交通政策審議会 鉄道部会・中央新幹線小委員会が2011年5月12日にリニア中央新幹線計画は妥当であるとの答申(家田委員長) さらに家田氏は保安院は浜岡原発の停止期間は2年程度としているため、現時点ではリニア計画には影響しないと発言。
同様に葛西JR東海会長は盛んに原発再稼働を主張。
自治体にも公開されないJR東海の調査。
2011年 上野原市秋山の棚の入沢やいくつかの沢での沢枯れ。戸別訪問で賠償額を決定。
(独法 鉄道建設・運輸施設整備支援機構が対応)
実験線残土捨て場は借金で住宅地計画、そして破綻、土地は県に売却。使用方法未定。
1日最大1736台のダンプが走る大鹿村。(環境影響評価)
ローカル線の無人化を進めるJR東海(飯田線ほか)
リニアが来れば町興しが出来ると期成同盟。リニアが来なければ町興しが出来ない?
メディアの自主規制(大広告主にたいする怯え?配慮? チラシ折り込みへの対応、JR東海に批判的な企画は出版社やメディに通らない)
人口減少社会においても乗客が1.5倍に増えるというJR東海試算の謎
アリバイ作りの地元説明会(JR東海は質問数を限定し、同じ解答を繰り返す)
あまりに不誠実なJR東海の対応(情報公開性の欠如)
地方公務員が用地買収や地元対応している現実

読み終わって再認識した。原発ムラ(マフィア)が存在するようにリニアムラ(マフィア)が存在する。安全神話が新聞や広告のプロパガンダで作り上げられた様にリニア中央新幹線も本当にリニアが必要な訳ではなく、リニア新幹線工事が欲しい一部のムラの人々により行われているのだろう。そこには、政治家、行政、学者らが蜘蛛の巣を張り巡らすように魑魅魍魎な世界が広がっているのだろう。フリージャーナリストや一部鉄道専門家が昔から指摘しているリニアの危険性(環境破壊、経済性、技術性)に対する回答はいまだJR東海からはない。
なぜ、リニア中央新幹線構想に大蔵省(現財務省)がゴーサインを出さなかったのか、国費導入が馬鹿査定と言われるのが分かっていたからだと想像するのである。官僚としてのプライドとして。