山梨の大雪の後に行われた公聴会

舩木さんの発言があまりにも正論なので備忘録としてメモしておきます。
新聞報道されない事実がここにもあるわけです。僕は舩木さんに会議録のハードコピーを頂き知った次第。

それ比べ、知事、学者の発言の軽いこと(笑)

派遣委員の山梨県における意見聴取に関する記録

一、期日

   平成二十六年二月二十一日(金)

二、場所

   甲府富士屋ホテル

三、意見を聴取した問題

   平成二十六年度一般会計予算、平成二十六年度特別会計予算及び平成二十六年度政府関係機関予算について

四、出席者

 (1) 派遣委員

    座長 二階 俊博君

       あかま二郎君   大岡 敏孝君

       金田 勝年君   菅家 一郎君

       中谷 真一君   林  幹雄君

       湯川 一行君   長妻  昭君

       古川 元久君   坂本祐之輔君

       山田  宏君   石田 祝稔君

       中島 克仁君   柿沢 未途君

 (2) 現地参加議員

       長崎幸太郎君

 (3) 意見陳述者

    山梨県知事       横内 正明君

    公立大学法人山梨県立大学理事         波木井 昇君

    山梨学院大学法学部教授 中井 道夫君

    萌木の村株式会社代表取締役社長        舩木 上次君

 (4) その他の出席者

    予算委員会専門員    石崎 貴俊君

    財務省主計局主計官   有泉  秀君


webで読めます。かなり下の方になります。
また、こちらの 216/418からも会議録が見ることが出来ます。

その1
○舩木上次君 きょうは、このような機会を下さいまして、ありがとうございます。
 議員の先生には質問をしてはいけないというふうに言われましたけれども、自問自答してください。皆さんは政治家ですか、政治屋ですか。
 私は、最近いろいろ考えます。弱者ですか、怠け者ですか。あるいは、病気を治す医者でしょうか、病気を食い物にする医者なんでしょうか。そのどちらも、今言ったそれ以外にもたくさんあります。たくさんありますけれども、本質でない人たちの方が力を持ってしまって、そこが決定権を持っているのではないかというふうに非常に思います。
 例えば、私は、東北の震災が起きた後、何回か東北に行っております。皆さんも御存じのとおりに、いわきに行きますと一万軒の仮設住宅がございます。人口は三万人ふえたと聞いております。しかし、その三万人の人たちが仕事をしておりません。中には弱者の方もいます。そこは手を差し伸べなければいけないと思いますけれども、仕事をしてしまいますと補償が出なくなる。そのために、毎日パチンコ屋に行かなければならない。そして、そのパチンコ屋からどこへ資金が流れるんでしょうか。
 もちろん、弱者の方々がいますから、そういう人たちを私はないがしろにしろというふうに言っているわけではございませんけれども、その辺の区別ができない。その辺の区別をしっかりしなければならないのが、私は、リーダーではないかというふうに思っております。
 それから、都会と田舎、ここに問題がたくさんあるというふうに思っています。なぜ都会のルールを田舎に押しつけるのでしょうか。建築基準法、食品衛生法、消防法等々々。なぜ東京のルールを、あるいは大都市のルールを田舎に持ってくるんでしょうか。
 あるいは、今回、早川町が非常に、雪で覆われ、大変なことになりました。私のおやじのふるさとは丹波山でございます、奥多摩湖の上の方でございます。しかし、あそこの道路は見事なくらい整備されています。二車線の弾丸道路が走っております。早川町にも私は行きます。二車線の道路が走っております。人口は千数百人ですけれども、常駐しているのは千人を切っております。そこになぜ二車線の道路が必要なんでしょうか。
 二車線の道路をつくるということは、一車線の道路をつくる二・五倍から三倍の経費がかかります。一車線が二車線になったから、二倍になるということではございません。山梨のような中山間では、崖を切り開かなければなりません。土の移動量は、二車線にした場合、四倍になってしまいます。そこに交通量が頻繁にあるわけではございません。それならば、一車線でもいいのではないでしょうか。待避所があればいいのではないでしょうか。しかし、どういうわけか、国のルールの中で道路整備をすると、地方で必要ないといっても、それだけのものが必要になってしまいます。
 私の隣の長野県の南牧村は、今回の雪害のとき、あっという間に、一家に一台トラクターがありますから、雪の除雪は一日で済んでしまいました。しかし、南牧の人たちが、今、私の清里まで来て、そして雪の除雪を手伝ってくれていますが、その人ときのう私は話しました。
 南牧というところは、今、畑の中に農道整備をいっぱいしております。U字溝を入れて舗装をかけております。なぜ畑の中の農道に、トラクターが走るところに、U字溝をつけて舗装道路が必要なんでしょうか。あなた方は本当に必要なのかと言うと、必要ないに決まっている、トラクターで十分だ、こう言う。それならば、早川町でも、小菅村でもそうなんですけれども、私は、道路を整備するならば、ウニモグという、ドイツにある、十輪の、どんなところでも入っていく車がございます、そういうものを置いておく方がはるかに効率はいいのではないでしょうか。
 私は、人間それぞれの、先生方も私たちも、持っている発想というものは、親からいただいたDNAで真っ白のハードのコンピューターを手に入れているというふうに思います。そして、出会った人、出会った時代、出会った場所というものがソフトに入ってまいります。そして、そのソフトから発想が生まれてまいります。
 私は、国のリーダーになる人たちは、未来を予測する、そういうものを今までに蓄えて、そして創造性と感性を持った、そこで決定していくというふうな能力が求められているのではないかというふうに思うんです。ところが、今そういう人がいない。現場の、目先の対応能力はあるかもしれないけれども、私は、現場の、目先の対応能力は地方に任せてくれればいいと思っている。我々の方がはるかにノウハウを持っている。
 例えば、山梨県のような中山間の道路を見てください。今回、雪が降って、私どものところでは、小海線も、あるいは市道も、それから県道も、大きな木が倒れました。
 なぜ倒れたかというと、平らのところと、私たちの中山間では、斜面があるところでは、道路をとったときに必ずのり面というのができてしまいます。のり面は、最初は、道路をつくって芝をふきつけて、そして土の流れを抑えます。芝が生えてきますと、木が種をそこにまき散らします。そうすると、木が育ち始めます。
 普通のところでは、腐葉層と表土というのがあって、ゴボウ根というのが生えていますから、木はしっかり定着しております。
 しかし、山梨県の山の道路はほとんど、斜面とそれから埋め立てたところでございます。そこのところの木は、小さいうちはいいんですけれども、道路をつくって何年かたちますと、そこに木が生え、そして大きな木になってきます。そうすると、雪が降ったときに耐えられなくなります。それが倒れてきます。そんなことはお構いなしだ。今、我々のところでは、そういう危険が山のようにあります。
 それから、東北へ行っても私は非常に感じます。なぜ東北で、多分、同じような地震は、百年かからないとエネルギーがたまらないのではないですか。しかし、セメントの工事は、百年でセメントは劣化いたします。そこに、百年後の津波のために、百年後に劣化して耐久力のない防波堤をなぜつくらなければいけないんですか。
 私は、雲仙・普賢岳に昔行ったことがございます。あそこのところには、土石流を防ぐためのダムがずうっとつくられておりました。そして、土石流をこれで防げるんだという話を聞きました。普賢岳が爆発した後、行きました。それは全て消えてなくなっておりました。
 よく考えてみれば、富士山だって同じです。駿河湾にあった富士山が今あそこまで押し寄せられているわけです。
 人間が自然をコントロールするなどということは、私はおこがましいというふうに思っています。それならば、自然とどう共生するかということだと思います。
 私が東北へ行ったときに、東北の人たちはみんな言いました。百年前、江戸時代、明治、津波が来たら逃げろ、逃げる道だけ確保しておけば、そうすれば救われると。
 しかし、巨大な公共工事で、そして災害を防げると。災害を防げるのは、小さな災害だけでございます。想定外というのは、皆さん、私たちも、今までは想定外というふうなことで逃げてまいりましたけれども、災害は、想定外などというものはございません。それならば、やはりもう少し人間は謙虚になるべきではないかというふうに思います。
 それから、先ほど言いましたように、私は、建築基準法や食品衛生法やそれから消防法や、いろいろそういうふうなもので、地元で新しい発想をしようと思っても、その壁に、いつも法律の壁に私たちは打ちのめされてしまいます。
 この間、隣の村に行きました。耐震工事をやりました。そこのところで、新しくするために、非常口の看板がいっぱいついておりました。そこの村会議員の人に言いました。おまえたちと役場の職員と村の人しかここは利用しないじゃないか、そこになぜああいうふうな非常口の看板をつけなきゃいけないんだ、そして、それをつけて、一年に一回はチェックして、こんなことは東京で不特定多数の人たちが利用するところに必要なのであって、こういうところには要らないだろうと。
 あるいは、私の隣には牧場がございます。なぜ朝搾ったおいしい牛乳を我々は飲んではいけないんでしょうか。世界もそうなんでしょうか。
 食品衛生法という法律があって、牧場で、隣のうちですよ、搾った牛乳を私たちは飲むことができません。それは、東京に持っていって安全、安心ということは必要なのかもしれませんけれども、私たちが田舎で生まれ、田舎で育っている、田舎で最大にメリットがあることは、新鮮なものを飲んだり食べたり、そしてそれをお客様にもてなしとして使うというふうなことではないのかと思うんです。
 そういうふうな意味では、私は、都会のルールと田舎のルールを変えてもらいたい、そしてそれをすることによって田舎の魅力を高めてもらいたいんです。
 それから、山梨県の場合には、地場産業は、宝飾、ワイン、そして甲斐絹というふうに言われています。ワイン一つとっても、フランスには絶対勝てません。それ以外の国にも勝てないかもしれません。それはなぜかというと、二十過ぎてからでなければワインを飲むことができないからです。フランスのワインをつくっている方々は、小学校、中学校から飲んでいますよ。
 基本的に、もう我々は、まるでエレファントシンドロームかゆでガエルのように、常識というものに縛られております。そして、国民は、そんなものに縛られて、みずからが新しい創造をしようとしておりません。そして、このような会議をすると、多くの人たちは国に何かを求めるだけです。
 私は、何かを求めている人たちに与えても無駄だというふうに思っています。私は、自立した人たちに援助する、自立した人たちに力を差し伸べるということが必要なのではないかというふうに思っております。
 この山梨県は、全国で全く異質な場所でございます。海抜が百メートルぐらいから富士の頂上までの高低差を持っております。水は、八ケ岳、南アルプス、富士山、秩父と、それぞれ違う水質の水を持っています。そういうふうなものから、私たちは、新しい価値を生み出すということをこれからしていきたいというふうに思っております。そのためには、今までの私たちが持っている価値観を根本から変えて、新しい創造をするということだというふうに思っております。
 そして、経済的な発展を求めることがいいのか。
 私の町は清里というところです。開拓で入って、苦しい中で観光地になり、そして豊かになりました。その後、衰退の一途をたどりました。私の仲間はほとんど失いました。
 経済的に豊かになっていく場合、経済的な豊かさと文化度の豊かさが求められております。中国の方々を見てください。経済的には私たち以上に豊かになってきたというふうに思います。しかし、あの生き方がすてきなのでしょうか。私は、そうは思いません。
 やはり、経済的な豊かさとともに人間的な豊かさを求める、そういうふるさとをつくりたい。そういうふるさとをつくるために、皆さんに、皆さんが何ができるかということを考えていただきたいというふうに思います。
 それから、きょうここに、この会をやるために一体幾らの経費をかけているんでしょうか。私は、十分のために何百万もの予算を使うことが本当に正しいのか正しくないのか、もう一度考えてもらいたいというふうに思います。
 それから、このようなセレモニーで、繰り返し繰り返し、本音の、深い、奥深い議論がされないことがとてももったいないというふうに思います。もし時間があるならば、私のところへ来てください。そして、夜を徹して、皆さんとともに地方のことを、あるいは地方の悩みを聞いていただきたいというふうに思います。
 以上です。

その2
○舩木上次君 先ほど、その前に林先生の御質問がありまして、鹿がふえているというふうな話がございましたけれども、今回の大雪が二度続いたために、八ケ岳の鹿は大分減りそうでございます。そういう意味では、本当に、自然と我々のかかわり方というのはそのときそのときで変わるのではないかというふうに思っております。
 それから、地方に住むお年寄りはどういうふうにしたら元気でというふうなことだと思います。それから、お年寄りが元気な町だったらば子供も育つと思うんですけれども、基本的に、人間は欲望なんですね。皆さんみたいなのは権利欲、権力欲が強い人たちですね。若い人たちは性欲が強かったり、こういうことですね、食欲が強かったり。この欲望が生きる力でございますから、お年寄りにどういう欲望を持たせるかということだと思います。それは、普通に食って、息してでは欲望にはならぬのですよ。強い感動とか、あるいは出会いとか、そういうものが必要だというふうに思うんです。
 私は、二十四年前から野外でバレエの公演をやっております。最近、車椅子に乗るような、本当に腰が曲がったおじいちゃんやおばあちゃんたちが来ます。その人たちが何と言うかというと、来年は何やるで、こういうふうに質問するわけですね。来年まで俺は頑張るからね、こう言うわけですよ。そういうものが地方にあれば、それは生きる力になるのではないかというふうに思います。
 それから、住んでいるところに誇りを持たせなきゃだめなんですね。残念ながら、山梨県でどんなにいいワインだといっても、二万五千円が最高の値段でございます。なぜフランスの五大シャトーのワインは数十万とか数百万するんでしょうか。技術が同じであっても、同じものをつくれても、残念ながら、まだ私たちの、この山梨県でつくったものにはそこまでの付加価値がつきません。
 私は、やはり、若い人たちが地方でというのは、付加価値がついて、自分がやっていることに誇りが持てるような政策が大事だというふうに思います。そのためには、環境が美しく、文化度が高く、人間性が高いというふうなものを。
 偶然、山梨県は大都会の中の唯一の田舎です。四千万近い東京を中心とした人口の中に、たった八十万弱の、八十万前後ですね、そのくらいの、これからちょっとずつ減っていきますけれども、それだけしか人が住んでいないんです。都会の中の小さなオアシスです。
 そして、なおかつ、今回の災害では大変な不便があったかもしれませんけれども、動線は、東京は、丹波山線と奥多摩線と二十号線しかありません。静岡は、五十二号と御殿場線しかございません。長野県は、二十号線と百四十一しかありません。これだけ閉鎖すれば、我々はザ・山梨というブランドをつくれるんですよ。
 この小さいこと、そして個々特殊な能力を生かして、そして若い人たちが夢が持てる産業を育成するということが私は大事ではないか、そういうものに支援していただく皆さんがいてほしいというふうに思います。

その3
○舩木上次君 私は、他と違うということがそこの最大の武器だというふうに思っております。他と違うものに劣等感を持つのではなくて、そこに、私たちはローカルの他と違うものをグローバルにするという能力が求められていると思っております。
 地球というのは、十九のプレートの上に乗っているんですね。ところが、この山梨だけは四つのプレートがクロスしているんです。これは世界でこの地だけでございます。四つのプレートがクロスしているために、富士山、南アルプス、八ケ岳、秩父と、水を掘りますと、温泉を掘りますと、全部泉質が違います。別府や草津のように湯量が多いわけではございません。ただし、小さな山に囲まれたこの地は、泉質が違う四つの種類の温泉とか水があるということです。
 そのことによって、水がとてもきれいなんですね。そのために、サントリーの白州の蒸留所のようなものがございます。あの白州の蒸留所は、今、世界一になりました。質、規模、環境。そして、ワインも水です、日本酒もあります、ビールもあります。そういう意味では、他と違うこの環境を我々がもう一回共通認識するというようなことが大事だと思います。
 それから、今、山梨県の課題は、遠景は最高に美しい、近景が汚い、それは山梨県の民度の問題です。そして、汚いことになれてしまいました。私は、中央線を通っても、あるいは高速道路を通っても、その周辺から見える景色が美しくなければ、幾ら頑張っても付加価値は上がらないというふうに思っています。
 そういうところを、私は、何かをやる、何かをやる、何かをやるではなくて、ある意味では、凡事を徹底するということが大事だと思います。それは、美しい近景をつくる。そして、美しい近景をつくれば、神がつくった景色があるわけでございますから。人間ができることは人間がきれいにすればいい、そして自然と共生していくということが大事だというふうに思っています。

その4
○舩木上次君 私は、昭和二十四年の生まれで、開拓時代を知っています。その時代、開拓しているおやじや先輩たちの後ろ姿を見ていて、今、私はたまたまオルゴールの博物館をやっているんですね。オルゴール、自動演奏楽器なんですけれども、多分、日本のコレクターでは、日本で一番多いコレクションです。世界じゅうのお金持ちとつき合いました。アメリカだと、ギネスとか、ニューヨークにいるゼネラル・モーターズのデュポンとかそれからヨーロッパの貴族とか、貧乏人から金持ちまで会っている人間ではないかと思います。
 だけれども、金持ちの人たちを見ていて、誰が一番幸せだ、最近こういうふうに思うんですよ。開拓者が一番幸せでした、開拓者が。ライバルであり、仲間なんですよ。お互いにみんな真っ裸なんですよ。相手がどのぐらい金持っているか金持っていないか、どのぐらい頑張っているか、みんな見えるわけですね。地域というのは、信頼できるライバルですね、そういう関係で結ばれるのが非常にいいと思います。
 そして、人間は楽な生き方というのは、多分、隠し事がないということでございます。だから、皆さんは、小さな隠し事でやたらと悩んで自殺する国会議員まで出てしまうわけですよ。オープンにすればいいわけですよ。そうすれば、そんなに大したことない。
 基本的に地域というのは、それぞれがみんな透明感があって、そして、お互いにライバルでありながら時々助け合って、開拓のときには、大きな巨木が、あるいは大きな石が出てくれば、みんなで取り除かなければ畑はできません。そして、その作業が終わった後、汗をかいた後、みんなで酒を飲んでいる先輩たちを見ていて、私は、地域が、一番、そういうふうな発展をしていく中で、自分が汗がかけて未来に何かを残せるというものがあったとしたならば、最高におもしろいというふうに思っています。そんなことが、やっと六十五になってわかってきました。だけれども、もう時間がないのが、これが一番の悩みですね。

その5
○坂本(祐)委員 ありがとうございます。
 まさに、地域力を高めていく、ですから舩木さんのようなエネルギーがある方が代々続いていけばいい、それが持続可能な町おこしにつながっていくのかなと思います。
 全国でそういった町おこしをしていきたい、あるいは商店会の活性化をしていきたいと思うのは常でありまして、しかし、なかなか、商店会で行うイベントやお祭りや、今の時代にふさわしい新しいイベントを考案しても、それが単発的に終わってしまう。そこにはやはり舩木さんのようなエネルギッシュな方がいらっしゃらないのかもしれません。
 そう考えると、今おっしゃっておられた、このエネルギーをさらに継続していくための大切な要素というのは何でしょうか。
○舩木上次君 これは私は、必然だと思いますよ。取ってつけたようなものはだめなんですね。偶然もだめです。それが一番マッチしている、それしかないということだと思うんですね。
 例えば、長野県の小布施というところがございますね。あそこのところは、市村さんを初めとしてまちづくりをやっておりました。だけれども、そこに新しい良識が入りました。それはセーラというお嬢様ですね。そして、そのセーラというお嬢様がやっていることを、木下豊という、文屋という情報を発信する人がいます。
 基本的に、まちづくりというのは、一人のばかと、あるいは一人の若者と、そして、今までの価値観から新しい価値観が創造されるわけですから、それを守る人と、そしてそれを発信していく人が必要なんですね。そういうチームができたところだけ、例えば九州の湯布院なんかも同じだと思います、そういうふうなものが生まれてくるんじゃないかと。
 多くのコンサルタントというのは、日本じゅうを研究してきて、その事例を持ってまいります。しかし、持ってきても、コンサルというのは、銭が去ると書いてコンサルでございます。
 私に言わせると、そこの土地にいる人材が自立しない限り、まちづくりはできません。まちづくりというのは本来は、十人が十人集まってもまちづくりはできないんですね。そこにいる人材が、十人の中で誰が一番感性が豊かで創造性が高くて、そして、将来を見ているかというのを見つけることなんですよ。そして、その人に託すということができるかできないかです。
 山梨県の場合には、若干、出るくいをみんなが打ちますから、なかなか山梨県の中では芽が吹くということは少ないのではないかというふうに思います。

その6
○舩木上次君 ポール・ラッシュという人は、能力差を比較した人でございます。能力差は、できる、できない。人間は生まれてきたときからもう能力の差がございます。その能力差は比較するんですけれども、ポール・ラッシュは能力差で人を差別しなかった人です。そして、全ての人が自分のポジションがある、自分のそのポジションで力を発揮しろと。
 彼は、当時、全国中学野球、今の高校野球です、あれを戦後復活させました。それから、アメリカンフットボールを日本へ紹介しました。そして、アメリカンフットボールとかあるいは野球とかというのは、それぞれ、ピッチャーの役割あるいはキャッチャーの役割、ファーストの役割。ですから、組織の長をやる知事の場合には、どう適材適所に配置するかということが、僕はトップの仕事だと思います。方向を示すことがトップの仕事だと思います。
 そういう意味では、ポール・ラッシュというのは、能力がないというふうには言わなかったんですね。能力がないのではなくて、ある物差しではかると能力がないだけであって、ほかに役割がある。
 私は、たまたま、山梨県の知的発達障害のスペシャルオリンピックスというところの会長をやっております。皆さんにもぜひお願いしたいんですけれども、パラリンピックとオリンピックは東京で決まりましたけれども、スペシャルオリンピックスの二〇一九年の夏の世界大会がどこで行われるか、まだ決まっておりません。我々は、スペシャルオリンピックス日本という、そこで、二〇一九年の世界大会を東京に持ってきたいというふうに思っております。
 知的発達障害の子供たちも、実は、知的発達障害という、頭の偏差値の部分で低いだけで、それ以外は、色とか音とか、そういうものに対する突出した能力を持っているんですよ。そういう能力をそれぞれ生かすような地域づくりが求められているというふうに思っています。
 私は、それぞれ、あて職、自分の一番合っているポジションの生き方をしている人間が人生の勝利者だというふうに思っております。ポール・ラッシュはそういうことをみんなに教えようとした人だと思っています。

その7
○舩木上次君 少なくともフランスなんかの場合には、もう十歳過ぎたころから醸造家の娘でも息子でもワインを飲んでいますよね、そして親しんでいますよね。
 ですから、例えば、本当に山梨県をワインで特区にして、そしてワインで売り出そうとしたならば、世界と同じようなレベルにしなければ、日本の常識では、今のルールではそういう人たちを育てることは難しいですよね。二十過ぎなければ酒を飲んじゃいけないわけですから。向こうはもう十年も前に飲み始めている人間がやるわけですから。
 ですから、常識なんというのは場所によって極端に変わるわけですから、我々も、日本の常識が、それがいいのか悪いのかは別ですよ、もしそういうふうな方策を、方針をとらなければ、ワインはフランスに負ける、勝てない、最初からそう思わなきゃいけないし、勝とうと思うならば制度を変えなければならない部分が、極端に言えばあるんじゃないのかというふうに私は思うんです。

その8
○舩木上次君 私も六十年間こんな大雪を経験したことがないから、実は、あの大雪の日、自分のホテルへ行って仲間と話をしていました。降り出して、そして一時ごろになってみんなと別れて帰ったんですけれども、たかが五十メートルぐらいのところを三十分かかって歩きました。やはり信じられなかったですね。信じられない。ただ、信じられないというのと同時に、ここ二、三年、夏に大雨が降ったり、今までと全く違う現象が起きているというのは感じております。
 それから、皆さんみたいに東京にいる方は自然の変化というのは余り感じないと思いますけれども、田舎にいますと、生態系が全く変わってしまいました。山野草なんか全く別のものになってしまいました。我々が子供のころあったものは、もうほとんどありません。
 そういう意味では、四十五億年の地球の生きてきた中で、ここ数十年、極端に変化が始まっているんじゃないか。結局、それは、中国を初めとして世界が開発して、異常気象が起きてきて、これが慢性化するのではないか。やはり、これが百年に一度の大雪だというふうに思ったら大きな間違いで、来年からまたこういうふうなことが起きる可能性があるんじゃないか。
 ですから、考え方を、根本的からみんな考えてほしいと思っているんですよ。時々時々、各論として何かが起きるとその対策という目先のことばかり考えるけれども、そうじゃなくて、大きなところで変わり始めてきているというふうなことを予測しなければいけない時代に入ってきているのではないかというふうに、自然の中で住んでいるとそう思います。
 八ケ岳には、仙人小屋という、山から食材をとってレストランをやっている人がいるんですけれども、その人の話を聞けば、もう本当に環境が変わっているそうです。その人からちょっと下の私ですら、そう感じます。でも、だんだん都会に行くに従って、その感じ方は弱くなっているのではないかと思います。相当地球はというか、人間にとって地球は住みにくくなってきているのではないかと思います。


その9
○舩木上次君 私は、経済対策という必要悪という無駄遣いはないというふうに思っています。無駄遣いは基本的に無駄遣いです。それを経済対策だという理由をつけること自体、ナンセンスだと思います。それは、予算があり余るほどあるならともかく、半分しか税収がないのにこれだけ使い切って、そんなことは誰だってわかっていることだろう、将来にツケを残すことなんかわかっているのに、それをやり続けるというのは無責任過ぎると思います。
 私は、最近思うんです。日本のリーダーの人たちは、日本と海外に軸足があるんじゃないかというふうに思うんです。
 皆さんの御子息も、大学を海外に行かせたり、あるいは子供が海外で生活していたり、将来の仕事は海外でという人がいるんじゃないでしょうか。本当に日本が大変だと思っているのは、地方の人間と弱者ですよ。そして、日本のリーダー層の人たちは、軸足が日本と海外にあって、日本がだめになっても海外で生きていくからいいやみたいな価値観がないのかと。
 昔の田中先生とか金丸先生とかというのは、少なくとも海外には軸足がなかったですよ。田舎と、自分のふるさとと国に軸足があったかもしれません。そして、自分のところに利権も持ってきたかもしれません。
 しかし、今の日本のリーダーの人たちは、日本の地方がだめになっても構わない、自分たちは海外との軸足で、世界人として生きていけるみたいな考え方はないでしょうかというふうに最近思うんです。やはり私は、私たちは、地元と日本と、そして最後に世界の中の日本人であるという軸足を持たなければいけないのに、どうも上のリーダー層の人たちは地方を捨てているような気がします。
 それから、もう一つお願いがあるんですけれども、こういうことは考えられないでしょうか。日本が少子化になっても、東京あるいは大都会は当分大丈夫じゃないでしょうか。
 それは、地方で生まれた人たちが、親がさんざん苦労して育てて、優秀なやつは東京の大学へ行って、でき上がったら東京で、みんなそこで吸収してしまって、そして、そこで利用して、利用できなくなったらまた田舎に戻している。ですから、地方出身の人が都会に行くときには、その都会で、地方にかかった、その人がかかった養育費なり教育費なりを地方に戻すようなことをしていただけないものか。おいしいところだけを東京に持っていかれる、あるいは都会に持っていかれるのは、田舎にいては甚だ不満でございます。
 そして、東京に優秀な人材を持っていかれるんです。田舎にはちょっと劣る人間が残るんです。それで村づくりをやれといったって、なかなかできません。優秀な人材をこっちへ戻してもらいたいと私は思います。

その10
○舩木上次君 例えば、山梨県の、私の町の北杜には、白州というサントリーの蒸留所がございます。
 サントリーというところは、白州という酒、ウイスキーを七百ミリリットルで八種類つくっています。三千円ぐらいから、一番高いのは十万五千円でございます。白州の十万五千円というのは、二十五年物でございます。十八年が二万円ぐらいです。その下が一万八千円ぐらい、八千円、六千円、三千円ぐらいです。
 白州の二十五年というウイスキーは、白州で二十五年寝かせたたる、二十五年以上昔のたるがブレンドされたものです。それでつくった白州の二十五年物のウイスキーが山梨県で売られていないんです。これはブランドにはなりません。私は、地元でつくった最高のものを地元が一番先に売る、ここで売る、そしてここに買いに来させるということが大事なんですね。それをするためには、そこでつくられたものを使いこなす民度が必要なんです。
 例えば、ジュエリーでも同じなんです。山梨県でジュエリーをつくっているけれども、山梨県の高額なジュエリーを買う人が伊勢丹に行って、高島屋に行って、和光で買っていたのでは、意味がないんです。山梨県に買いに来て、ここで買うことに価値があることをしなければだめなんですよ。
 例えば、ルイ・ヴィトンのバッグをフランスのパリで買うのと東京で買うのでは、ヴィトンの利益がどのくらい違うかわかりますか。ルイ・ヴィトンは、フランスから出るときには三〇%です。そして、中間業者がまた三割取ります。日本で一〇になります。ヴィトンは、日本に売った場合、元が三〇か四〇ですから、二〇%しかもうからないんです。でも、ルイ・ヴィトンに日本の女性が買いに行きますと、定価で売れますから、八〇%もうかるんです。同じものを売って、四倍キャッシュフローが残るんですよ。
 地産地消とかというのは、自分のところにキャッシュフローが幾ら残るかです。そして、キャッシュフローを幾ら残させるかというのが、それがそこの土地の文化度なんですね。そういう戦略をつくらない限り勝てないと僕は思っています。

その11
○舩木上次君 僕は、世界のリゾートを見て、便利になってリゾートが発展したというのを聞いたことがないし、見たこともございません。スイスへ行ったって山岳鉄道があるし、そこに高速道路を走らせようとか高速電車を走らせようという話を聞いたことがございません。フランスとイギリスがコンコルドを走らせていましたけれども、あの速い、マッハ二の旅客機を走らせていましたけれども、あれもやめました。
 旅行は、時間を消費することでございます。より時間をかけて、その時間の中に充実した内容があるかどうかです。
 例えば、今回、九州の「ななつ星」、あれにしても同じことが言えます。もし山梨県で今「ななつ星」を走らせたとして、それだけの価値をつけられる宿なり飲食店があるかというと、残念ながらございません。「ななつ星」の場合には、天空の森という、一泊三十万以上する宿、四組しか泊まれません、そこにあの電車は着けます。由布院に着けます。
 ブランドというのは、必ず、物と、その後ろに人がいます。山梨県の場合に、ブランドはあります、ブランドというか、物はあります。しかし、その後ろの人がブランド力にまだなっていないんです、残念ながら。
 それをつくって、そして、だから、例えば、平松知事が二階堂を売り出しました。あのときに、大分には百を超える焼酎屋がございます、その中で売り出したのは二階堂だけです。それを大分の象徴にしたわけです。そして、二階堂のおやじさんを表にどんどん出したんです。
 私は、山梨県でもブランドをつくるというならば、宝飾にしてもワインにしても、必ずその後ろに山梨県のスターをつくるべきだと思います。山梨県のデザイナーではこの人が一番と。もちろん、差はほとんどない状態です。だけれども、売っていくためにはスターが必要なんです。そういうことをしていく必要が僕はある。
 ただ、山梨県の場合には、何だ、俺のところだってもっといいのをつくっているとか、俺のところにはもういいデザイナーがいるとか、そういう話になって組織をつくれないところに山梨県がブランド力が弱くなる原因があると思います。
 ワインは長野県に負けました。小布施ワインが一遍に有名になりました。長野の田中知事がみのもんたの番組へ持っていきました、ワインを。小布施のワインを持っていきました。これが日本で一番うまいとテレビでやりました。長野にはほかにもワインをつくっているところがございます。だけれども、知事が一つの商品を持って、これが一番だと言ったんです。
 私は、横内知事にお願いしたいんです。山梨県で知事が一番おいしいと思うワインを、これが山梨県の代表的なワインだと売ってもらいたいんです。

その12
○舩木上次君 お百姓の仲間はたくさん持っているんですけれども、北海道から九州で、僕の仲間で百姓をやっている人間で、TPPに反対している人間は誰もいません。反対しているのは農協だけです。農協と八〇%の小規模農家です。よくわからない。
 だけれども、よく考えてみろと。TPPに関して農業ほど有利な日本はないというふうに、僕も、それから仲間も思っております。
 ほとんどの今の日本の農業は、S、L、Mで分けられます。内容は関係ないですね。市場に行って、S、L、Mだけです。でも、今分けなければならないのは中身の品質です。品質で分けなきゃなりません。
 日本の野菜にしても、山梨県がつくる果実にしても、特に山梨県の果実については、質のレベルでは世界一でございます。なぜこの世界一のレベルのものが価格競争に巻き込まれるんですか。土俵が違うはずですよ。今まで、向こうのチェリーを解禁して、サクランボ農家が潰れると言った。山形の寒河江にしたって、山梨県の南アルプスにしたって、サクランボ農家が潰れましたか。オレンジが解禁すれば、愛媛のミカンが潰れると言った。潰れたことはございませんね。
 私は、今から、中国やインドやこれから経済力を持つところ、日本は大量生産するところではございません、アメリカのように量をつくるところはともかく、日本のような小規模農業で少量生産で高品質のものを、高所得がある近隣の国があるわけですから、そこに質の戦略を打っていけば、幾らでも活路はあると僕は思います。
 そして、僕の仲間でTPPに反対している人間に会ったことがございません。だけれども、その人たちは、ほとんど農協とはかかわっておりません。勝手に騒いでいればいいよ、俺たちは俺たちの道で行くというふうに言われているんじゃないでしょうか。ある意味で、農業改革は農協改革ではないかというふうに思っています。