フォーカスぎふ「リニアルート、主張平行線」−岐阜新聞 Web


JRは無視するのでしょうね。

以下記事

 JR東海が今年秋の着工、東京−名古屋間で2027年の開業を目指すリニア中央新幹線。昨年9月に公表された環境影響評価(アセスメント)準備書で、国史跡の指定に向けて発掘調査が進む可児市久々利の大萱古窯跡群がある大萱地区は、リニアが地上を橋りょうで走行する計画となっている。これに対し、地元からは文化財や景観保護のため、地下を走行するよう求める声が上がり、両者の意見は平行線をたどっている。

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 大萱古窯跡群には、国宝の志野茶わん「卯花墻(うのはながき)」が焼かれた牟田洞古窯跡など重要な古窯跡が点在する。1966年には牟田洞、窯下、弥七田の計3カ所の古窯跡が県史跡になっている。国史跡を目指し、市は2012年7月から測量調査を始め、本年度は牟田洞、窯下古窯跡の磁気探査など本格的な試掘を行った。両古窯跡は約100メートルしか離れておらず、いずれも桃山時代以降の同時期に使われた。このため、両古窯跡を一体と見なし国史跡化を求める方針で、15年度の答申を目指す。

 計画ルートは両古窯跡の間を通り、国史跡を要望する範囲を分断するため、市は「古窯跡群の一体性が失われるため、遺跡や文化財としての重要な価値を損ない、影響は甚大」と訴える。久々利自治連合会の田口誠一会長(73)は「橋りょうを建てたり、土を削ったりすると国の史跡化を目指す場所を改変することになる」と、地上を通る計画から地下への変更を求めている。

 地元が文化財保護を要求し、声が通った事例もある。長野県駅が設置される飯田市では、11年に国史跡を目指す恒川(ごんが)遺跡群が候補地となり、再三回避を求めてきた。同年からパブリックコメントを募集し、同社に回避すべき場所を伝え続けた結果、準備書では候補地から外れた。本年度中には国史跡となる見通し。

 大萱古窯跡群をめぐっては、同社は地下化が困難な理由を、防災対策のため長大トンネルをできるだけ早く抜けて地上に出る必要があることや、過去に同市内の掘削土から重金属が流出したことから発生土量を少なくするためと説明する。さらに準備書作成に当たり「市と県に史跡や埋蔵文化財包蔵地について確認した」と強調。両古窯跡を一体と見なし国史跡化を目指していることは、準備書公表後に市から聞いたと困惑する。これに対し市側は「包蔵地の照会がリニアに関するものと聞いていない」と反論する。

 同社は「環境への影響を小さくするための工夫をしたい」と周囲との調和に前向きな姿勢をみせるが、ルートは市が国史跡を目指す区域との重複は避けられない状況。大萱地区の発掘調査を指導する藤澤良祐愛知学院大教授(59)は「大萱は桃山当時の窯の様子が良好な形で残っている場所で、近代的なリニアは景観にはそぐわない」と指摘。同社は「全く改変を行わないわけにはいかない」という。

 地元自治体などの意見を踏まえ、古田肇知事は25日までに同社に意見を提出する。大萱地区の地下化が知事意見にどう記されるかが、一つの焦点になる。地上と地下のいずれであっても、環境や文化財の保護は避けて通れない。陶芸の古里と経済発展を呼び込むリニアは、いずれも県の重要な地域資源。地元と市、JR東海は将来の地域の姿を見据えながら、知恵を出し合わなければならない。