〔連載〕宙を駆ける〜リニア開発の軌跡(4) : サイエンス : 企画・連載 : 関西発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


技術神話と安全神話の類似相同性でしょうか。
技術万能原理主義と言い換えても良いかもしれませんね。

以下記事

トンネル9割挑む掘削 「青函三種の神器」生かす

 車窓から眺める風景は、鉄道を利用する楽しみの一つだ。しかし、リニアモーターカーでは、そうした楽しみはあまり期待できない。

 東京(品川)―名古屋間(総延長286キロ)の9割近い246キロがトンネルで、足元よりずっと下や山の中を通るからだ。南アルプスなど高い山が連なる箇所では貫通させる際、難工事が予想される。数々の鉄道トンネルを完成させてきた世界トップレベルの日本の掘削技術が試される。

◆大深度地下利用

 リニア計画では、トンネルの本数は約30本になるとみられる。トンネルが多い理由はいくつかある。


 山岳部では、山に穴を開けて軌道を直線的に通すことで、時速500キロというリニアの高速性能を最大限生かせる。都市部では、地権者に補償する必要のない深さ40メートルを越える「大深度地下」を利用することで、時間も費用もかかる用地買収が不要になる。騒音や振動の防止にもなる。

 簡単な工事は一つもないが、中でも、高い掘削技術が必要になるのは、標高3000メートル級の山が連なる南アルプスなどを貫通する山岳トンネルだ。

 南アルプスでは、長さ25キロ、深さ1・4キロの山中を貫通するため、のしかかる土の重みに注意して掘り進めなければならない。地下水にも高い圧力がかかっており、水脈に当たれば消防車の放水のような勢いで噴き出す恐れもある。

 しかも、日本には泥や砂が固まった崩れやすい地層が多く、硬い地層も複雑に入り組んでいる。欧米もトンネル先進国だが、均質な崩れにくい地質が広がるため、日本の方が技術的に難しい工事がはるかに多い。

 その代表例が、青函トンネルだ。2010年にスイスのアルプス山脈に「ゴッタルドベーストンネル」(長さ57キロ、深さ2・3キロ)ができるまで、20年余りも世界最長だったこの海底トンネルの工事で、日本の掘削技術は大きく伸びた。

 鉄道建設・運輸施設整備支援機構設計技術部長の服部修一(57)によると、噴き出す海水と軟弱地盤に苦しんだ末に、「青函の三種の神器」と呼ばれる技術が生み出された。

 掘削前に最長2キロ先まで水平に小さな穴を開けて地質を調べる「先進ボーリング」と、周囲の岩盤に浸水を防ぐセメントを掘削半径の3倍の厚さで注入する「地盤注入」、トンネルの内側にコンクリートを吹き付けて崩壊を防ぐ「吹き付けコンクリート」だ。

 さらに、服部が「恐らく世界一の難工事」と振り返るトンネルも掘りきった。新潟県内を走る「北越急行」の鍋立山トンネル(上越市―十日町市)だ。全長わずか約9キロだが、完成までの月日は青函トンネルを上回り、22年近くもかかった。いくら掘っても、水を含んだ土が膨らんですぐに埋め戻す特殊な地質だったからだ。服部は「1か月掘り続けても、たった1・5メートルしか前に進まない時期もあった」と苦笑する。

 最終的には、青函トンネルのように地盤注入をして周囲を固めたうえ、トンネルの形に合わせた鋼鉄製の筒の中で少しずつ掘り進める方法を考案して克服した。

 これらの技術や経験は、リニアの工事でも生かされることになる。大手ゼネコン担当者は「我々は海外のどこに行っても掘れる技術の蓄積があるが、海外の業者が日本に来ても、まず掘れないだろう」という。

◆「神業」の正確性

 神戸大教授の芥川真一(54)(トンネル工学)によると、山岳トンネルはダイナマイトで爆破したり、専用の重機を使ったりして掘り進める。天井部が崩れないように、1〜2メートル進むごとに鋼材をはめてコンクリートを吹き付け、「ロックボルト」という鉄くいを周囲の岩盤に多数打ち込んで補強していく。

 一方、都市部のトンネルは、円筒形の掘削機を使って掘り進み、できた穴の壁面にブロックを組み込む「シールド工法」が基本となる。地下鉄などでも広く採用されている工法だ。

 芥川は「大都市の地下に、幾重にも立体交差するトンネルを正確に掘る技術は、海外から見れば神業のよう。山岳部に比べればかなり浅く、地下構造も分かっているので、掘削工事で大きな問題はないだろう」とみる。(敬称略)
(2014年1月27日 読売新聞)