社説:リニア新幹線 国民的議論が必要だ− 毎日jp(毎日新聞)


今頃マスコミが社説で書きます?審議会の議事録やら情報公開の不透明さをなぜこれまで黙ってきたのでしょうか?広告主への配慮ですかね。
一応、毎日新聞の本件に対する態度は評価はしますが、、、

以下記事
夢物語のようだったリニア新幹線が、急に現実味を帯びてきた。2027年に東京・品川−名古屋の開業を目指すJR東海が、環境影響評価準備書を公表し、詳しいルートや駅の位置が明らかになった。必要な手続きや国の認可を経て、来年度には着工したいという。

 沿線では早くも期待が膨らんでいる所もあるようだ。しかし、リニア中央新幹線は何十年に1度という超大型の国家的プロジェクトである。関係する都府県やJR東海という一企業だけの問題ではない。疑問や不安もまだ多く、今こそ徹底した国民的議論が必要である。

 リニアの強さは何といっても最高時速500キロという速さだ。計画では27年に品川−名古屋が最短40分、45年には品川−大阪が1時間強で結ばれる。その経済効果は十数兆円という民間試算もあるようだ。

 一方で、リニアという全く新しい技術を使った交通手段の導入には多くの未知数がある。まず、建設工事に関するものだ。名古屋までの全長286キロのうち約86%が地下やトンネル内の走行となる。中でも南アルプスを貫通する約25キロのトンネルは崩落や異常出水の危険がある地層を横切るため難工事が心配される。

 そして経済的未知数だ。総建設費は在来型の新幹線を大幅に上回る約9兆円と見積もられているが、さらに膨らまない保証はない。人口減少や高齢化が進む中、想定通りの利用者を確保できない恐れもある。大阪までつながるのは、今から32年も先なのだ。東海道新幹線とリニアを両方抱え、利益を維持できるのか。

 リニア中央新幹線の基本計画ができたのは40年前である。この間、日本の経済や社会構造は激変し、在来型新幹線の性能も格段と向上した。特に東日本大震災後、エネルギーをとりまく環境が変わり、大地震のリスクも一層認識されるようになっている。ピーク時の消費電力が新幹線の3倍とも言われ、地中深く走るリニアは本当に望まれる乗り物か。

 建設費は全額JR東海が負担する。しかし、だからといって一民間企業の設備投資と片付けるわけにはいかない。万一事業が失敗しJR東海が経営難に陥った場合、その公共性から国家(国民)が支援を求められる可能性も皆無ではないのだ。

 JR東海には沿線住民はもちろん、国民全体に納得のいく説明をしてほしい。国会で集中的に審議されたことがないが、客観的、中立的データに基づく政策論議が不可欠だ。

 関係者のみの楽観的見通しで突っ走ってはならない−−。福島第1原発事故から日本が学んだ教訓の一つだ。20年の東京五輪に間に合わせようという発想など論外である。