東京新聞:消費増税分で公共事業? 社会保障目的、怪しく:政治(TOKYO Web)

以下記事 図も東京新聞より

自民党が大型公共事業を各地で乱発しようとしている。安倍政権が秋に実施するか最終判断する消費税増税は、膨らみ続ける社会保障費に充てる財源とするはずだが、お金に色はない。公共事業を大盤振る舞いすれば増収分を食いつぶし、増税の目的を喪失しかねない。 (関口克己)

 七月の参院選で、自民党は党本部の公約のほか、地域独自の「ローカルマニフェスト」を作り、有権者に示した。本紙のまとめでは、三十八都道府県連が作成。そのほとんどで「経済再生」などを目的に、公共事業の推進を掲げた。内容は、実現可能性の有無を含めて百花繚乱(ひゃっかりょうらん)だ。

 京都府連が掲げた京都縦貫自動車道は二〇一四年度の完成が目前。一方で、愛知県連が掲げた県内の知多半島と渥美半島を結ぶセントラル大橋(仮称)はアイデア段階で、地元では「できるはずがない」との見方が支配的だ。長さは日本最長の瀬戸大橋(岡山県−香川県)に匹敵し、兆円単位の超巨大事業になりかねないからだ。

 都道府県連が参院選で公共事業を前面に掲げたのは、地方を重視する姿勢を示し、支持を得たいため。

 同時に、安倍政権が東日本大震災を教訓に、災害に強い国づくりを目指す「国土強靱(きょうじん)化」を掲げていることも背景にある。党からの圧力を受け、安倍政権が公共事業の推進に力を入れれば増税の目的が失われかねない。

 自民党が昨年八月、公明、民主各党と関連法を成立させた社会保障と税の一体改革は、消費税の増税分で社会保障を維持するのが目的だったからだ。

 ただ、増税法の付則に「防災・減災に役立つ分野に資金を重点的に配分する」との規定が盛り込まれ、公共事業費を増やす余地を残した。

 自民党の都道府県連が参院選で推進を掲げた公共事業のほかにも、各地では高度経済成長期に造られた道路や橋などの老朽化対策が求められている。

 東洋大学の根本祐二教授(公共政策)は「新規の公共事業を進めれば、既存のインフラの維持は諦めないといけない。優先順位なしに新規事業を進めるのは無責任だ」と指摘。消費税増税についても「社会保障に充てるのが目的のはず。新規事業を進めるなら、別の税負担を求めざるを得ない。国民に説明し、選択を求めないといけない」と話す。


東京新聞PK2013081602100067_size0