発信箱:野口英世と大統領=小倉孝保(欧州総局)− 毎日jp(毎日新聞)


野口の命日にちなんで記事がありましたので備忘録。


以下記事

発信箱:野口英世と大統領=小倉孝保(欧州総局)

毎日新聞 2013年05月22日 00時15分

 アフリカ・ガーナの首都アクラは、感染症研究で知られる野口英世の終焉(しゅうえん)の地である。国立コレブ教育病院内の元研究室は今、記念館になり、ゆかりの品が展示してある。先週、ここを訪ねた。野口の使った黒い顕微鏡を手にすると、ずしりと重さが伝わってきた。

 野口が黄熱病で51年の生涯を閉じたのは1928年5月21日。昨日が85回目の命日だった。そして今、彼を礎にした両国関係に新しい胎動が生まれている。その芽の主は昨年7月、就任したマハマ大統領である。

 大統領は91年から95年まで、在アクラ日本大使館の広報担当職員として働いた経験がある。93年には外務省の職員訓練プログラムにも参加している。二階尚人大使によると、大統領はよく、「日本人から規律正しさを学んだ」と語り、部下にも自身の経験を語って聞かせているらしい。

 ガーナはこのところ年平均6%の経済成長を実現し2010年、中所得国入りした。地域で最も安定した国で最近、原油の商業生産もスタートした。親中国とされた前大統領(昨年7月に死去)に代わる新大統領という意味でも日本の期待は高い。

 そのマハマ大統領が来月初め、横浜で開かれる第5回アフリカ開発会議(TICAD)に出席する予定だ。第1回のTICAD(93年)では自身、大使館職員としてアクラで準備に奔走したこともあり、会議には個人的思い入れもあるようだ。

 大統領は副大統領時代の10年3月、野口について、「彼こそ寄生虫と伝染病に対する人類の理解を深めた人物」と称賛している。野口の功績や日本人の規律までも知る大統領の誕生で、両国関係は深化の好機を迎えている。