図書館本

養老先生(1937-)の対談本。
岩村暢子氏(食卓からみた日本の近代かな)、岩澤信夫(自然農法)、畠山重篤(森は海の恋人)、鋸谷茂(森の救世主)。

岩澤さん、畠山さんの本を読んでいて内容的には既知であり、鋸谷さんも林業の分野では有名で記事などには触れていました。驚いた事に、岩澤さんは2011年に逝去されていたんですね。岩村さん以外はまさに実学(フィールド)の人。畠山さんは3.11震災の津波で被災された後の対談。

リアル(モノ)に関して、いつもの養老さん思想である脳化社会(ああすれば、こうなる)の反対側にある思想としての身体性を土台に話が進む。

備忘録的メモ
養老:そもそも実体としての「環境」など、存在しません。本来、「環境」とは「自分の周り」のことであり、もっと正しく言えば「自分そのもの」なんです。
畠山:(流域思想をもとに、ウナギの人口受精研究に予算が付く事に関して)そんな事に予算をつけるなら、川の流域を綺麗にするほうが効果的ではないかと思います。行政も学問の世界も、そういうふうに発想を変えられないんですね。
養老:(畠山さんの防潮堤反対にたいして)ダムを作ったことにして、お金をまいたら良いと僕は思う((笑) その方がコンクリートも鉄も使わないから、安く上がりますし、無駄になりません(多くの釣り人も同意するだろうな)
鋸谷:みなさんの生き物としての感覚で、残す木を選んでください、と講習会で話す。本質的な話をすると、山という場所に、人間は必要ないんです。山と川と海に人間はいらない。なぜなら、自然がそれを作ってくれているからです。中略 自然の生産力を阻害しない程度に木をいただくという考え方を持たなくてはなりません。
「トチを伐るバカ、植えるバカ」(非常に備えて大切に管理してきた)
半原杉(天然林)、有名スーパーが投資目的で買占め、ブローカーの関与、300ヘクタールあったブナと杉の混交林も裸になった。
農協が農家を食い物にしているのと同じように、森林組合は林家を食い物にしている。
林業界では、1964年の木材輸入の完全自由化によって、日本の林業は駄目になったと言われ続けています。けれども、それは言い訳にすぎません。外材輸入がなければ日本の山はことごとく裸になっていたでしょう。(過伐による)
林業現場での効率化の必要性(グーグルマップを使えば施業の境界管理もきちんと出来る、機械の効率的利用等々)

目次
第1章 現代人の日常には、現実がない―養老孟司×岩村暢子(進む食の「個化」
「ご馳走」の意味合いが変わった ほか)
第2章 田んぼには肥料も農薬もいらない―養老孟司×岩澤信夫(田んぼを耕さないコメ栽培
天啓を受けて ほか)
第3章 山と川に手を入れれば、漁業は復活する―養老孟司×畠山重篤(海は生きていた
赤い海を青く ほか)
第4章 「林学がない国」の森林を救う―養老孟司×鋸谷茂(川と森がつくってきた歴史
山から材木をどう運ぶか ほか)


日本のリアル 農業・漁業・林業 そして食卓を語り合う (PHP新書)
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究極の田んぼ
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森は海の恋人 (文春文庫)
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図解 これならできる山づくり―人工林再生の新しいやり方
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